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「最後の舞台にふさわしい敗北だった」フェデラーはなぜレーバー・カップを引退試合に選んだ?「僕は幽霊になるわけじゃない(笑)」
posted2022/09/27 17:01
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
Getty Images
テニスにとって幸せなひとつの時代が終わった。そのテクニックと芸術性を限りなく高いところまで引き上げ、テニスプレーヤー、アスリートの枠を超えて世界中から敬愛された“帝王”ロジャー・フェデラーが現役最後の仕事を終えたのだ。
引退試合のチケットは数百万円単位にも
ヨーロッパ選抜チーム対世界選抜チームという異色の対抗戦『レーバー・カップ』を、フェデラーはラストマッチに選んだ。ウィンブルドンでも全米オープンでもなく、しかもシングルスではなくダブルスで。昨年のウィンブルドン後に3度目の膝の手術をし、今まで1試合も戦うことができていなかったフェデラーにとって、それが今の<限界>だった。宿敵であり同志であるラファエル・ナダルとともにダブルスでコートに立つことが、フェデラーらしい姿のままで今実現できる最大限のショーのかたちだったのだろう。チケットは転売サイトで数百万円単位の値がついていた。
レーバー・カップは、フェデラーが自身の設立したマネジメント会社『TEAM8』とオーストラリア・テニス協会とともに立ち上げたイベントでもある。初開催は2017年。大会名に冠されているのは、1960年代に2度年間グランドスラムを達成して往年の最強選手と謳われるオーストラリアのロッド・レーバーで、70~80年代の大スターであるビヨン・ボルグとジョン・マッケンローがそれぞれのチームのキャプテンを務める。選手も若手からベテランまで幅広い年代の実力者が入り交じり、世代を超え、国の枠を超えたファン垂涎の3日間にわたるチームイベントである。フェデラーはその意義について過去にこう語っている。