- #1
- #2
サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
W杯イヤーに顎を骨折…中村憲剛が語る“本大会前の選手心理”「もう呼ばれないんじゃないか、と」「当確印が出ていても不安は消えない」
text by
中村憲剛+戸塚啓Kengo Nakamura + Kei Totsuka
photograph byKenzaburo Matsuoka/AFLO
posted2022/09/22 11:06
南アフリカW杯を控えた2010年2月に下顎骨を骨折し、スタンドから試合を観戦する中村憲剛氏(同年3月)。懸命なリハビリを経てW杯への切符をつかんだ
ベテランは本大会にピークを合わせることができる
大迫勇也と浅野拓磨が不在の攻撃陣に比べると、守備陣は不安視されていません。もちろん、板倉滉の負傷は痛いですが、CBには吉田麻也、冨安健洋、谷口彰悟に加えて、スイス1部のグラスホッパーでポジションをつかんでいる瀬古歩夢が招集されました。そして右SBには酒井宏樹が戻ってきました。
個人的に気になるのは、所属クラブでのパフォーマンスとケガです。クラブで調子が上がらない選手を日本代表戦でそのまま起用するのか。また、中3日の連戦となるW杯のグループステージで、ケガから復帰してきた冨安や吉田をフルにプレーさせることにリスクはないのか。
18年のロシアW杯後にチームを任された森保監督は、段階的に世代交代を進めてきました。チームには東京五輪世代が増えていますが、最終ラインは入れ替えの多くないセクションです。吉田、酒井は東京五輪にも参加しましたし、長友佑都がずっとチームを支えてきています。彼らもベテランとして年齢も重ねていることで、肉体的な衰えを指摘するメディアもありますが、僕自身はこう考えます。
彼らのような経験のある選手は、ここまで来ればコンディションを本大会に合わせた状態で迎えることができる。一番大切なのは、「本大会でどう最大値を出すか」です。そう言いつつも、W杯前の総仕上げとなる今回の2試合を通して、チームが目標とするベスト8への道筋をつけておきたい。つまりは、しっかりとしたパフォーマンスを見せる必要がある。とてもコンディショニングが難しいシリーズになると思いますが、そのあたりを、森保監督がどう考えるのか。監督自身の言葉などを、注意深く追いかけていきたいと思います。
中村憲剛氏が2010年に味わった「不安」とは
日本代表に選ばれ続けながらW杯を迎えるという立場を、僕自身も経験したことがあります。
2006年のドイツW杯後から10年の南アフリカW杯へ向かっていく道のりでは、コンスタントに代表入りしていました。ところが、W杯イヤーである10年の2月に顎を骨折してしまいました。「W杯に間に合わないかも」という不安に駆られました。ケガが完治してパフォーマンスを出せても、離脱していた影響でもう呼ばれないんじゃないか、という思いもありました。
3月にはバーレーンとのアジアカップ予選が、4月にはセルビアとの親善試合がありました。自分が呼ばれていない試合で誰かが活躍したらと考えると、落ち着いて試合を観ることができなかった。