常連組に気後れして“お客さん”のような立ち位置に…谷口彰悟がいま明かす代表初招集時の苦い記憶「日本代表の重みを理解していなかった」

　今回は日本代表についての話を聞くインタビューだと伝えていた。

　ただ最初に、日常の舞台であるJリーグのことを聞こうと思った。

　ある試合後の光景が忘れられなかったからである。

限界を超えてピッチに倒れ込んだ「あの試合」

　 8月7日に行われた、J1リーグ第24節の川崎フロンターレ対横浜F・マリノス。

　川崎にとっては首位との直接対決であり、もし黒星を喫した場合は、優勝争いから脱落することになる。いわば、絶対に負けられない真夏の天王山だった。

　壮絶な死闘となったゲームの勝者は川崎だった。

　アディショナルタイムのラストプレーで、家長昭博からのクロスをセンターバックのジェジエウがヘディングで叩き込んだのだ。劇的な一撃を決めたブラジル人の元には、ベンチにいた選手たちも駆け寄り、大きな、大きな歓喜の輪が出来ていた。

　そのとき、ふとセンターサークル付近に目をやると、ガッツポーズをしながら倒れ込んでいる選手がいたのである。

――谷口彰悟だった。

ジェジエウの決勝点が決まった直後、ピッチに倒れ込んで拳を突き上げる　©AFLO SPORT

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　川崎フロンターレの過去の得点シーンを見てもらえばわかるのだが、谷口は必ずと言っていいほど得点者のもとに駆けつけて祝福している。どんなに遠くともセレブレーションの輪に加わるのが彼のモットーだからである。

　だがあの場面では、そんなこだわりを持つ男がその場に倒れ込んでいた。センターバックの相棒が決めた決勝弾を見届けたあの瞬間は、「ありがとう。そして、もう終わってくれ」と祈っていたのだという。すでに自分の限界を超えていたのだろう。歓喜の現場に駆けつける体力も残っていなかったのだ。あのときのことを尋ねると、本人は苦く笑った。

「座り込んでしまって、ジェジエウのところまでいけなかったのは覚えてますね。フラフラで『やばい。しんどいぞ』と思いながらやっていました（笑）。最後はなんとかピッチに立っていたという記憶しかないです」

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