甲子園の風BACK NUMBER
「野球留学生が増える=強くなる」は本当か? 夏の甲子園「都道府県別勝利数」で明らかになった新事実! “地元の球児に限らない”参加校は戦前にも
text by
岡野誠Makoto Okano
photograph byAFLO
posted2022/08/17 11:02
「野球留学生が増える=強くなる」は本当なのか。夏の甲子園「都道府県別勝利数」を見てみると…
「野球留学生」と「勝利数」は比例しない
その『年代1』で鳥取は19勝を稼いで10位タイに付けたが、以降は19勝しか挙げておらず、戦後の勝利数では最下位となっている。一般論として、「弱い県に行けば甲子園に出場しやすくなる」と考えて野球留学を行なう者もいる。それならば、鳥取には選手が集まり、強くなるはずだ。前出の調査によれば、中国地方の1996年~2005年の夏の大会出場校の“野球留学生”の数は以下のようになる。同時期の成績(全国順位)と合わせてご覧いただきたい。
島根:42人 6勝(32位タイ)
鳥取:21人 1勝(最下位タイ)
広島:16人 11勝(18位タイ)
岡山:13人 15勝(9位タイ)
山口: 2人 11勝(18位タイ)
中国地方2位の野球留学生がいながら、鳥取は10年で1勝しかしていない。中国地方1位の島根の成績も振るわない。一方で、1年平均1.3人の岡山は大阪、徳島、宮城と並んで15勝を記録し、1年平均0.2人の山口も悪い成績ではない。このデータからも、弱い県が野球留学生を取れば強くなるとは言い切れない。実質的な総合最下位である山形はこの調査で全国3位の82人を招きながら、該当10年で4勝しかしていない。
あの高校が強いのは全国から選手を集めているから――毎年のように繰り広げられる野球留学生の議論。本企画で紹介したデータからも明らかな通り、野球留学生の数と勝利数が比例するわけではない。言い換えれば、青森や宮城も野球留学生だけで強くなったわけではないのである。
仮にチームの強さと野球留学がイコールで結ばれるような単純な関係だったら……高校野球がこれほどまで国民的人気を得ることもなかっただろう。