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「野球留学生が増える=強くなる」は本当か? 夏の甲子園「都道府県別勝利数」で明らかになった新事実! “地元の球児に限らない”参加校は戦前にも
text by
岡野誠Makoto Okano
photograph byAFLO
posted2022/08/17 11:02
「野球留学生が増える=強くなる」は本当なのか。夏の甲子園「都道府県別勝利数」を見てみると…
流れを変えたのは、青森山田と光星学院(現・八戸学院光星)である。『年代4』の21大会のうち、2校合わせて17度出場。この期間の青森の初戦敗退はわずか4度で、ベスト8以上が8度と一気に常勝県になった。光星学院は2011年から2年連続準優勝に輝いた。
この背景に、野球留学の存在があると考えられている。青森は前出の野球留学生調査(1996年~2005年)で4位の80人を受け入れており、その時期に14勝を挙げた。
事実、光星学院の準優勝時の決勝スタメンを見ると、2011年は大阪8、沖縄1と全員が県外選手だった。2012年は大阪4、青森1、岩手1、神奈川1、三重1、沖縄1で東北出身が2人いる。エースの金沢湧紀は地元の八戸で、主将の田村龍弘(ロッテ)や4番の北條史也(阪神)は大阪だった。同じ東北勢の宮城は総合17位ながら、『年代4』では青森より1つ上の4位に付けた。2003年には大阪出身のダルビッシュ有(日本ハム)が快投を見せ、東北高校が準優勝を果たしている。
野球留学がクローズアップされる要因の1つには、この東北2県の快進撃がある。だが、多数の野球留学生を受け入れれば、必ずしも強くなるわけではない。総合50位から39位を見てみよう。
【夏の甲子園「都道府県別勝利数」50~39位】
39位タイ 滋賀 38勝(出場なし→最下位→29位タイ→22位タイ)
39位タイ 佐賀 38勝(34位タイ→42位タイ→29位タイ→39位タイ)
39位タイ 鳥取 38勝(10位タイ→37位タイ→39位タイ→最下位)
42位タイ 福島 35勝(最下位タイ→37位タイ→39位タイ→22位タイ)
42位タイ 三重 35勝(最下位タイ→31位タイ→36位→42位)
44位 島根 31勝(22位タイ→42位タイ→44位→43位タイ)
45位 富山 30勝(34位タイ→25位タイ→最下位→39位タイ)
46位 新潟 28勝(29位タイ→44位タイ→39位タイ→38位)
47位 山形 27勝(最下位タイ→46位→39位タイ→30位タイ)
48位 満州 12勝(14位→出場なし→出場なし→出場なし)
49位 台湾 11勝(15位タイ→出場なし→出場なし→出場なし)
50位 朝鮮 8勝(22位タイ→出場なし→出場なし→出場なし)
47都道府県なのに、なぜ“50位”まで存在するのかといえば、戦前には日本領だった朝鮮、満州、台湾が参加していたからだ。
1926年に大連商(満州)、1931年に嘉義農林(台湾)が準優勝している。嘉義農林の選手は日本、台湾、台湾原住民族の混成チームだった。“野球留学”したわけではないにせよ、当時から“地元”だけに限らない参加校はあったのだ。