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「チームの真のリーダーは私」トルシエが語る02年日韓W杯の真実と22年日本代表の成熟「私の意図は理解されなかった」
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byGatty Images
posted2022/08/03 11:02
トルシエが率いた2002年の日本代表を中心選手として牽引した中田英寿。チームをベスト16に導いた
森保は私と同じようには働けない
森保は私と同じようには働けない。彼はそこを考慮したうえで仕事をせねばならない。より人に依拠した守備、異なるコンセプトの守備を構築せざるを得ない。私のようなやり方で彼はチームを構築できない。
今日、私が日本代表監督に就任したら、このシステムを実践するのは以前よりもずっと難しい。選手たちがチームに合流するのは試合の3日前であるからだ。ラボラトリーを作るのは、今は簡単ではない」
――ではあなたが今、代表を率いるとしたら別のシステム、別の戦術を採用するのでしょうか?
「いや、同じ戦略で臨む。何故なら1週間あれば対処は可能だからだ。その証拠といえるのが日本U‐21対アルゼンチンU‐21戦(1998年11月23日、東京・国立)だ。あの試合では、わずか1週間で選手たちが私のシステムを理解し、U‐20世界チャンピオンを1対0で破った。
しかしシステムを彼らの頭の中に植えつけるためには、私は膨大なマネジメントを行わねばならなかった。だが1週間で実現するのは可能で何の問題もない。私には独自の方法論があるからだ」
――そのうえ今日の選手は、サッカーをよりよく理解していますから……。
「その通りで、フラット3を実践するための要件は整っている」
――では今の選手で、あなたの時代にいたらグループに加えたかったのは誰でしょうか?
「全員がそうだ。今の選手たちのクオリティを見れば……、比較しても意味はないが、今の代表選手たちの能力ならば、私は全員を自分のチームに加えたい。吉田が偉大な選手であるのは間違いないし、三笘は本山のイメージと重なる。
逆に高原が今のチームにいれば、彼は大きく貢献できるだろう。しかしそれは私のシステムを採用する限りにおいてだ。森保のシステムでは、高原もカウンターアタックを強いられるが、高原はカウンターアタックの選手ではない。彼はネイマールと同じでボールを呼び込み、足元に置いてプレーを構築するタイプだ。私の時代の選手たちも才能に溢れていたが、今の選手はより完璧だ。よりポリバレントで経験も豊富だ。
今の日本代表は……、チームは構築された。昨日、彼らが証明したのは、ドイツを相手にしても十分に戦えるだろうということだった。日本はドイツ戦に向けての最初の試験に合格した。ただしそれは、さらなる武器を身につけた場合においてという条件つきではあったが」