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「ドイツやスペインと間違いなく戦える」トルシエがブラジル戦の日本代表に見た日韓W杯から20年の進化とカタールへの期待
posted2022/08/03 11:01
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph by
Takuya Sugiyama
フィリップ・トルシエから電話がかかってきたのは、日本対チュニジア戦(6月14日)が終了した直後だった。日本の予想外の完敗に終わったこの試合の後、リモートで記者会見が行われているなか、私はトルシエとSNSでやりとりをしていた。もしも彼が試合を見ていたら、感想を是非とも聞きたかったが、答えはノンで逆に何が起こったのか尋ねられた。
ブラジル戦もそうだったように、W杯予選などの節目となる試合では、トルシエにテレビ観戦してもらい直後に話を聞くのが恒例となっている。だが、チュニジア戦は、その発想が端から抜け落ちていた。こんなことなら見てもらえばよかったと思ったが後の祭りである。会見そっちのけでチャットを続けていると、もどかしくなったのかトルシエが電話で直接話しかけてきた。
「いったい何が起こったのか。信じられない結果だ。ボールの支配率を見たが、日本は60%を上回っていた。あり得ない結果だ」
――吉田麻也が多くのミスを犯しました。最初のPKとなったタックルと2点目のボールロスト。3点目も彼のパスからボールを奪われての失点でした。
「吉田なのか?」
――そうです。それに遠藤航も数多くボールを失い、パスでもミスを犯しました。日本の攻撃は、チュニジアの守備に粉砕されました。
日本は簡単に勝つと思っていた
「0対3というのは信じられない結果だ。みんな驚いているだろう。昨日のフランスも最悪だった。日本同様に4試合をこなしたが、結果は2分2敗だった。だから注意は必要だ。試合を見られなかったのは残念だったが……。
――あなたのコメントが必要なときに……。
「君も日本が簡単に勝つと思っていたのだろう」
――そうです。だからあなたの意見を求めるまでもないと。
「これは日本にとって嬉しい警鐘だ。支配することと勝つことはイコールではない。より良い明日を迎えるために、どうしてミスが生じたのかを突き詰めることだ」
プレスルームでこれ以上話を続けるわけにいかず、トルシエとの短いやりとりはここで終わった。