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「日本では給料日が前倒しになるの?」サッカー代理人が明かす、なぜブラジル人選手は日本が好きか?「治安がいい…だけじゃない“お金の事情”」
text by
栗原正夫Masao Kurihara
photograph byGetty Images
posted2022/03/25 11:02
柏(2010~14年)、名古屋(14~15年)、横浜FC(17~20年)で活躍したレアンドロ・ドミンゲスもやはり稲川氏の契約選手だった
「家族を大事にするブラジル人にとって、日本の安全性は魅力の1つです。治安のよくないブラジルで大金を稼いだとしても、奥さんは気軽にきらびやかな格好はできません。でも、日本に来ればそんな心配はなく、子どもだって安心して学校に行けます。
以前ファベーラ(スラム街)出身の選手と会った際に、話をしていてもまったく目を合わそうとしないので『どうして?』と聞いたら、彼が育った地域では目を合わせたら危険で、下手をしたら命も危ない、と。そういう状況下で、(目を合わせないのは)小さい頃からのクセだと言うんです。ブラジルにはそういうエリアもあるわけで、日本とはもちろん、欧州の国と比べても安全に対する考え方は少し違うかもしれません」
ブラジル人選手は約20%の税金がかからない
そして、ブラジル人選手が日本に多い最も大きな理由は、両国間の租税条約の内容にあると稲川はいう。
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ブラジルのクラブから日本のクラブへ選手が移籍した場合、日本のクラブからブラジルのクラブへ移籍金の支払いが行なわれる。そうした国外との取引には通常約20%の税がかかるのだが、日本とブラジルの租税条約ではサッカー選手の輸出入(移籍金)も免税措置の対象項目となっている。仮に100万ドルの移籍金がかかった場合、一旦は約125万ドルを支払うも、税として上乗せされた約25万ドルのほとんどはのちに還付されるという。また、ブラジル人選手が受け取る年俸も軽減税率の対象となり、日本のクラブ、またブラジル人選手の双方にメリットがあるというのだ。
「来日するブラジル人選手が日本への移籍でいちばん気にするのはお金ですし、なぜJリーグにブラジル人選手が多いかといえば、こうした事情があるわけです。この租税条約は国によって適用される項目が違っていて、(日本から見れば)サッカー選手の移籍に適用されるのはブラジルのほか、1、2カ国しかありません。アルゼンチン人選手や韓国人選手がJリーグに来てもこの免税の対象にはならないのです」
目の前でコリンチャンスとの契約書を破らせた
稲川は2010年にネルシーニョ監督の強い意向もあって、レアンドロ・ドミンゲスを柏に加入させているが、その際にレアンドロ・ドミンゲスは移籍先として名門コリンチャンスと柏を天秤にかけて、最終的に柏行きを選択したと話す。