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無為無策の典型モイーズがよもやの進化 ライスを筆頭に個々も輝く古豪ウェストハムが今季のプレミアをかき回す 

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粕谷秀樹

粕谷秀樹Hideki Kasuya

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posted2021/12/25 17:00

無為無策の典型モイーズがよもやの進化 ライスを筆頭に個々も輝く古豪ウェストハムが今季のプレミアをかき回す<Number Web> photograph by Getty Images

リバプールやチェルシーを撃破するなど好調を維持するウェストハム。質の高いタレントも揃っており、昨季を上回る成績を残せるか

監督人事の迷走が不振の要因に

 そんなウェストハムは、タイトルと無縁のシーズンが続いている。これまでの栄冠はFAカップ3回、カップウィナーズ・カップ1回だけ。しかも、1979-80シーズンにFAカップを制してから、早42年が過ぎている。そろそろタイトルが欲しい。

 もちろんプレミアリーグの優勝経験もなく、同リーグが発足した1993-94シーズン以降の最高ランクは1998-99シーズンの5位だ。2003-04、2011-12シーズンはチャンピオンシップ(実質2部)に降格するなど、サポーターの期待にはまったく応えていない。

 不振が続く要因のひとつに、監督人事の迷走が挙げられる。

 ビリー・ボンズ→ハリー・レドナップ→グレン・ローダー→アラン・パーデュー→アラン・カービッシュリー→ジャンフランコ・ゾラ→アブラム・グラント→ケビン・キーン(暫定)→サム・アラダイス→スラベン・ビリッチ→デイビッド・モイーズ→マヌエル・ペレグリーニ→モイーズと、コロコロ入れ替わっている。

 守備偏重、ポゼッション重視、モチベーター、放任主義など、監督のタイプが一貫していない。

 しかも、2018年5月に解雇したモイーズを1年7カ月後に呼び戻すという珍事に、多くのサポーターが首を傾げ……いや、怒り心頭に発したのである。

リンガードらの活躍で昨季は6位と躍進

 実際、筆者も呆れていた。

 モイーズはエバートンでそこそこの成績を収めた後、ユナイテッド、レアル・ソシエダ、サンダーランドでことごとく失敗。ビリッチの後任として2019年12月にウェストハムの監督に再任後も、負けたくないだけのフットボールがサポーターの反感とひんしゅくを買い、シーズン終了後の解任が予想された。監督としては“終わっていた”からだ。

 ところが、昨シーズンは冬の移籍市場で途中加入(ユナイテッドからローン移籍)したジェシー・リンガードの大活躍で、同じロンドン勢のアーセナルとトッテナムを見下ろす6位に躍進。2019-20シーズンに比べると10位もジャンプアップしたため、反感とひんしゅくが歓迎に変わった。

 軽快なドリブル、対戦相手の虚をつくラストパス、さらには正確なフィニッシュなど、確かにリンガードは素晴らしかった。トマーシュ・ソーチェクのエアバトルは無敵で、最終ラインをプロテクトしつつ、前線に的確なパスを送ったライスはイングランド代表の定位置を確保するまでに成長した。

【次ページ】 好調だった2014-15シーズンは後半戦に失速

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