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無為無策の典型モイーズがよもやの進化 ライスを筆頭に個々も輝く古豪ウェストハムが今季のプレミアをかき回す
posted2021/12/25 17:00
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph by
Getty Images
ボビー・ムーア、ジェフ・ハースト、トレバー・ブルッキング、リオ・ファーディナンド、マイケル・キャリック、フランク・ランパード……。これまで、ウェストハムの下部組織は数多くの名選手を輩出し、イングランド・フットボール界に貢献してきた。今年でクラブ創設126年を数える古豪でもある。
世界水準のCBファーディナンドも在籍
オールドファンならご存知だろうが、ムーアとハーストはイングランド代表のレジェンドだ。前者はキャプテンであり守備の要、後者は攻撃の軸。彼らは1966年に地元開催したワールドカップでの優勝に、多大な貢献をしている。
ブルッキングは1960年代中期から20年近く活躍したテクニカルなMFであり、彼の流れを汲む男がキャリックだ。丁寧なパスワークでリズムを維持しながら、的確な状況判断でピンチを未然に防いでいた。
ファーディナンドは2000年に約28億4400万円でリーズに新天地を求めて、2年後には64億2500万円でマンチェスター・ユナイテッドに引き抜かれた。正確なフィードと相手の攻撃を遅らせる絶妙のポジショニングは、まさしく世界水準だった。
その後、ユナイテッドのキャプテンに就任。クリスティアーノ・ロナウドやウェイン・ルーニー、カルロス・テベスなどの超個性的かつ、わがままな若者たちを束ねたリーダーシップも特筆に値する。
香川真司に対しても「カガーワ」でも「カガワー」でも「カーガワ」でもなく、正しく「カガワ」と発音するようにメディアに促した一件でも、面倒見の良さがうかがえる。
そして、ランパードはウェストハムでは芽が出なかったものの、チェルシーに移籍してジョゼ・モウリーニョと出会い、その才能を開花させた。3シーズン連続で全試合出場を果たした驚異的なスタミナと、公式戦5年連続20得点という圧倒的な攻撃力を兼ね備える凄腕だった。
ライス獲得には最低1億3000万ポンド
彼ら、偉大なる先人に続く存在を現チームで挙げるとするなら、満場一致でデクラン・ライスだろう。タイプとしてはキャリックに近く、今シーズンはシュートに対する積極性も出てきた。
近未来のステップアップは間違いなく、一部にマンチェスター・シティとチェルシーが第一ターゲットに定めたといった情報もある。さらに、ユナイテッドの新監督に就任したラルフ・ラングニックも「ライスを詳細にチェックせよ」との指令をスタッフに送ったと伝えられている。
「デクランが欲しいのなら、最低でも1億3000万ポンド(約195億円)」
ウェストハムのデイビッド・モイーズ監督は徹底抗戦する構えだが、シティをはじめとするメガクラブなら、1億3000万ポンドは許容範囲だ。来年夏の移籍市場で、ライスは話題を独占するに違いない。