ぶら野球BACK NUMBER
「そりゃあないぜタツノリ…」“球団史上最も勝った監督”原辰徳に巨人ファンの冷めた空気…なぜズレが生まれた? 問題は原巨人の“負け方”
text by
中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph byNanae Suzuki
posted2021/11/04 17:05
63歳の原監督は通算1152勝。球団史上最も勝った監督になった
今こそ、原辰徳はあの頃の初心に帰るときではないだろうか。そう、再び沖縄キャンプで獅子舞に噛まれることから始めるべきじゃ……というのは置いといて、その前に2021年のポストシーズンが待ち受けている。CSファーストステージは敵地甲子園での阪神戦だ。後継者育成も球界革命も、「勝利と育成」も「勝利と改革」もひとまず置いておこう。久々にシンプルに「勝利」のみを追い求める、エクスキューズなしの原野球を見てみたい。
『ジャイアンツ、やるじゃないか』
昭和の選手時代は偉大なONと比較され「チャンスに打てないひ弱な四番」と大物OBや週刊誌から叩かれ続けながらも、80年代の通算本塁打数と総打点でセ・リーグのトップは若大将・原だった。つまり、背番号8は誰よりも批判されながら、誰よりも結果を残したわけだ。平成から令和にかけては、監督として圧倒的な結果を積み上げながら、相変わらずネットユーザーや広岡達朗からディスられるのもまた原辰徳だ。同時にいつの時代も「なぜタツノリの凄さを分からないのか」と擁護する熱狂的ファンが一定数存在する。その価値観の衝突にある種の“熱”が生まれるのだ。エンターテインメントとして、最も重要な見る者の心を震わせる狂熱である。賛否両論の中で突き進む嵐を呼ぶ男。今の球界でそういう強烈なキャラクターは原辰徳以外にいないだろう。
だが、今季終盤の原采配に対しては、さすがのファンもアンチもどことなく冷めたような雰囲気が漂っていた。愛と幻想の左右病。自らを撃ち抜くマシンガン継投。もはや腹立たしいというより、抜け殻のように虚ろでどこか寂しかった。そりゃあないぜタツノリ……と。賛否以前に、恐ろしく空虚だったのだ。その終着地が10月の屈辱の10連敗である。だから、願う。こんな泥にまみれた時だからこそ、原監督にはポストシーズンの戦いでもう一度、原点を見つめなおしてほしい。
遠く20年前の2001年秋、まだ権力も実績も何もなかった当時43歳の原辰徳は、悲願の監督就任会見でこんな印象的な言葉を残している。
「ジャイアンツファンだけではなく、アンチジャイアンツの人にも『ジャイアンツ、やるじゃないか』とアピールする野球をしていきたいです」
See you baseball freak……