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「あいつはすぐにムキになるんです(笑)」恩師・両角速監督と先輩・佐藤悠基が語った大迫傑の“変わらない本質”
posted2021/10/17 06:00
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph by
Getty Images
――大迫傑さんが30歳という年齢で引退を決断したことについて、両角監督と佐藤選手はどのように受け止めましたか。
両角 (大迫)傑からは「オリンピックのレースで最後にします」と、1年前に報告を受けていました。驚きはありましたが、本人が東京オリンピックを最終目標にして最後の日々を送りたいと言うので、「精一杯頑張ってほしい」という言葉をその時に送りました。
佐藤 彼と食事に行った時に「一回一回のマラソンで、神経をすごくすり減らして追い込んでやっている」と聞いていたので、そんなに長くはやらないのかなと感じていました。東京オリンピックに退路を絶って臨むというのは彼らしかったですね。
彼と走ることは僕にとってはすごく刺激になっていたので、そのニュースが出たとき、去年の12月のレースで彼と一緒に撮った写真をインスタにあげさせてもらいました。
「すごく感性が豊かになった」両角監督が感じた成長
――おふたりは『決戦前のランニングノート』を読んで、率直にどんな感想を抱きましたか?
両角 大迫自身は「シンプル」という言葉を普段から時々使うんですが、考えていることはすごく深くて、いろんなことを考えて走っているんだなと感じました。彼を教えたのは高校の時で、そこから早稲田大学で4年間彼なりに努力して、それからアメリカに行きましたから、私とは距離がありました。私のなかでは高校時代で彼の印象がストップしているので、この本を読んだり彼が発信しているものを読み聞きすると、すごく成長したなと感じます。
初めて会った時は非常に幼い印象があったので、言葉遣いひとつとっても、すごく感性が豊かになったなと。それはいろんなことを経験したからでしょう。競技に関してもそうですし、家族もいますから。ひとりでのトレーニングには孤独も感じたでしょう。この日誌は、そんな彼の複雑な心境をまとめる役割を果たしているのでは。彼の寂しさなどさまざまな感情が読み取れて、とても面白いなと感じました。
佐藤 僕も、試合で彼と話す時とは違う顔を感じるところがありました。もともと我が強く、自分を持っている選手なんですが、彼がどういうところにストレスを感じているのかがよくわかります。いちアスリートとして、共感できるところもすごく多かったです。弱みはもともと見せないし、すごい選手なんですけど、人間らしい部分も感じられました。