Number ExBACK NUMBER

往復ビンタ10発以上「きつい振りすんな!」竹田高剣道部主将“死亡事件”から12年…遺族が明かす“暴力指導の壮絶さ” 

text by

中小路徹

中小路徹Nakakoji Toru

PROFILE

photograph by家族提供

posted2021/09/15 11:04

往復ビンタ10発以上「きつい振りすんな!」竹田高剣道部主将“死亡事件”から12年…遺族が明かす“暴力指導の壮絶さ”<Number Web> photograph by 家族提供

大分県立竹田高で起きた剣道部主将熱中症死亡事故。今夏、十三回忌を迎えた両親はこれまで、司法の場で指導者の責任を問い続けてきた

 筆者は剣太さんの死を、英士さんと奈美さんが無駄にしなかったと思っている。

部活動暴力は「刑事罰」を問われる時代になった

 近年、暴力行為を犯したスポーツ指導者には、厳罰化が進んでいる。殴る行為がなぜかスポーツでは「指導の一環」と容認されてきたが、潮目は変わった。

 今年2月には、兵庫県宝塚市の中学校の元柔道部顧問に、傷害罪で懲役2年、執行猶予3年の有罪判決が神戸地裁から言い渡された。元顧問は中学の武道場で、差し入れのアイスキャンディーを食べたことをとがめ、1年生に足払いなどの技をかけ、背骨の骨折の重傷を負わせた。

 今年7月には、熊本県の公立中学校のバレーボール部の指導員が、傷害の疑いで逮捕された。練習をしていた生徒の顔面を蹴って、打撲を負わせたためだ。

 部活動指導での暴力行為は、「行き過ぎ」として教員の立場への処分にとどまりがちだったが、刑事罰を問われる時代になったということだ。剣太さんの熱中症死亡の背後にあったしごきと暴力的な体質と、その責任を問い続ける英士さんと奈美さんの活動も、そのうねりを生む原動力の一つになった。

 厳罰化は抑止につながらなければ意味がない。2人が訴えるように、スポーツ指導者には、思わず手を出しそうになったら、こう考えて踏みとどまってもらいたい。子どもを殴ったら、自分も罰せられる……。

 剣太さんが中学卒業時、同級生たちと埋めたタイムカプセルがある。30歳を迎える年に掘り出す約束のものだ。これについて英士さんにはこんな記憶がある。

「確か、『ウイスキーを買うけん、お金ちょうだい』と言っていた。みんなで飲もうと思ったのか」

 来年、掘り出される。

関連記事

BACK 1 2 3 4 5

他競技の前後の記事

ページトップ