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「真新しい問題ではない」日本人アスリートの〈性的画像問題〉を米国女性写真家に伝えると…世界的フォトエージェンシーの取り組みとは?
posted2021/09/12 11:02
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
Getty Images
世界最大級のデジタルコンテンツカンパニーとして知られ、IOC(国際オリンピック委員会)公式フォトエージェンシーでもある「Getty Images(ゲッティイメージズ)」が、女性カメラマンの増員に取り組んでいる。
背景にあるものの一つは、近年叫ばれているスポーツ報道における女性アスリート写真の性的悪用問題。多様性やジェンダーイコーリティの議論が進む中で行なわれた東京オリンピック・パラリンピックが閉幕した今、ゲッティイメージズ(以下、ゲッティ)はこの問題にどのように取り組んでいこうと考えているのか。コンテンツ部門のグローバルヘッドであるケン・マイナルディス氏と、同社のベテラン女性カメラマンであるエルザ・ガリソン氏を取材した。
東京五輪会場で見た女性カメラマンは1割程度
1995年にロイター通信社ロンドン支局でキャリアをスタートしたマイナルディス氏は、2004年にゲッティに入社。2018年からコンテンツ全体の執行責任者を務めている。マイナルディス氏は近年のスポーツ報道写真の変化についてこのように語る。
「この30年間にスポーツ写真は“記録するメディア”から、テレビでは見られない独自の視点で撮影するメディアへと変化してきました」
テレビ中継の進歩や拡大に伴って、ゲッティは専門性の高いスポーツカメラマンを増員し、「それによってテレビやストリーミングでは伝えられないコンテンツとしてのクオリティが高まっている」と言う。
しかしながら、写真の質の向上に寄与してきた女性の数は、業界全体を通じて少なかった。日本を例にとると、内閣府男女共同参画局の調査発表によれば新聞社・通信社の女性記者の比率は約20パーセント。この数字は筆者がオリンピックの取材現場で感じている肌感覚とほぼ同じだが、カメラマンに限って言えば1割くらいという感覚だ。実際に筆者が東京五輪の複数の試合会場でざっと数えたところ、女性カメラマンは1割程度かそれ以下だった。
女性カメラマンを増やすことが問題解決の糸口
写真業界における女性カメラマンの実情をマイナルディス氏はどのように見てきたのか。
「歴史的に見ると、多くの業界と同様に女性がカメラマンとしてキャリアを積む機会は、男性と比べて圧倒的に少なく、男性が支配的でした。一方で、スポーツ写真の分野で働くことを希望する才能ある若い女性カメラマンは増えつつありました」