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【侍ジャパン】菅野、坂本、鈴木誠也らの選出に不安の声も出ているが…“調子の良さ”だけでは通じない「国際大会」の難しさとは?
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2021/06/26 14:20
現在、調整のため登録抹消中の巨人・菅野。東京五輪本番までに、調子を取り戻せるか
日本では見切られても、初見の国際大会では通用する?
実際に山田は「プレミア12」でも最後の決勝戦では3ランを放つなど、結果を残して生き残った。外国人投手特有の動くボールを経験し、それぞれの技術力の高さがあるから、次は対応できるという判断だったわけだ。
こうして打者には相手の投げるボールへの対応が重視される一方で、投手陣については国際大会向けの投球ができるか、そういう球種を持っているかが選考のポイントだった。
特に昨今の国際大会で大事なのが高めに真っ直ぐが投げられるかどうか。今は米国では打球角度重視のアッパースイングが主流となるために、落ちるボールとともに真っ直ぐの高めへの制球力ということが大事になってくる。
日本では高校野球から、とにかく真っ直ぐも変化球も低めに制球する事を求められて、練習を繰り返してきているために、「意識して高めに投げる」ことが意外と難しいと複数の投手から聞いたことがある。
ルーキーながら選出された広島・栗林良吏投手、西武・平良海馬投手ら国際大会初選出の投手の抜擢には、そうしたピッチングスタイルへの評価があった。DeNAでの現状を不安視される山崎も、シンカーと高めの真っ直ぐというコンビーションが日本の打者には見切られ始めているかもしれない。しかし国際大会の相手は初見で、まだまだ通用するという判断だったと思われる。
北京五輪で4番を任された新井は予選の韓国戦で先制の2ランホーマーを放ち、上原もクローザーとして予選でセーブを挙げるなど結果を残した。
故障や不振に喘いでいた選手たちも、オリンピックという舞台では改めてリセットして期待通りの力を発揮していた。そういう姿を実際に見てきて、自身も経験してきた稲葉監督だからこそ、今回の選手選考で経験と実績から国際大会向きの選手を優先したという事なのだろう。
北京五輪の選手選考で1つだけ失敗だったと思うこと
ただ北京五輪での星野監督の選手選考で1つだけ失敗だったと思うのは、大会直前にシーズン中に痛めた左足のけがで最後まで出られるかどうかが危ぶまれていたソフトバンク・川崎宗則内野手を本人の強い希望もあって帯同してしまった事だった。そこで万全ではない川崎を外す決断ができなかったことで、結果的には大会中に故障が重症化。実質23人で戦うことになってしまっている。
そう考えると代表編成という点では、アクシデントがあれば、一度決めたメンバーでも決然と入れ替えの決断ができるかどうか。そこが開幕までに残された監督の大きな仕事になるのだろう。
野球の開幕は7月28日。
そこまでまだ1カ月もある。
チームとは生きものであり、まだまだ変化する余地もあるはずなのである。