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覚醒のワケは「バッキバキになったので、アハハ」…女子400m“17年ぶり日本記録超え”の衝撃 「陸上界の新ヒロイン」フロレス・アリエ(20歳)とは何者か
posted2025/05/12 17:10

静岡国際陸上の女子400mで日本記録超えのレコードを叩き出した日体大3年のフロレス・アリエ。現在、日本国籍取得中の新星が秘めた可能性とは
text by

別府響Hibiki Beppu
photograph by
AFLO
時計の針は、あまりに突然に動き出した。
5月3日に行われた陸上競技の静岡国際女子400mのレースで、日体大3年のフロレス・アリエが2008年に千葉麻美(ナチュリル)がマークした日本記録を上回る51秒71で優勝したのだ。
レース後には「まさかの51秒台。出したというより出てしまった記録」と、フロレス本人も目を丸くしていたが、53秒台だった自己記録を一気に1秒以上塗り替える覚醒劇だった。
フロレスが出した記録の「価値」
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実はこの記録が持つ意味は、数字以上に大きい。
女子400mの日本記録は17年もの間更新されておらず、女子トラック主要種目においては現在、最古の記録となっている。また51秒台のタイムも日本人選手ではこれまで日本記録保持者の千葉以外出したことがなく、歴代パフォーマンス10傑も未だほぼ千葉の記録が占めている。
それだけひとりの選手が傑出していた種目に、ようやく風穴を開けたのがフロレスの登場なのだ。
静岡・浜松市生まれのフロレスだが、父がペルーと日本、母はイタリアとペルーにルーツを持ち、現在はペルー国籍。そのため日本記録の更新とはならなかった。だが、「ペルーは生まれてすぐの頃に一度、旅行で行ったことがあるんですけど……ほとんど記憶はないんです」と本人がいうように、生粋の日本育ち。現在、日本国籍も申請中だ。
そんな選手がようやく凍り付いていた時計の針を動かしたことは、女子ロングスプリント界にとって大きな意味を持つ。
静岡国際から1週間後の関東インカレでは、400m、200m、4×100mリレーの3種目に出場し、4日間で計8レースを走る大車輪ぶりを発揮。相模原ギオンスタジアムの強風の中にもかかわらず、個人種目は400mで大会新記録、200mでも追い風参考ながら大会記録を大きく上回る好記録で二冠を果たした。