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【侍ジャパン】菅野、坂本、鈴木誠也らの選出に不安の声も出ているが…“調子の良さ”だけでは通じない「国際大会」の難しさとは?
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2021/06/26 14:20
現在、調整のため登録抹消中の巨人・菅野。東京五輪本番までに、調子を取り戻せるか
稲葉監督「いい選手を選ぶのではなく……」
そしてこの代替選手の選考で1つ言えるのは、中川のような大事な場面で左打者を抑えるために起用されるリリーバーというのは、やはりそれなりの経験が必要だということだ。回の頭からではなく、場合によってはいきなり走者を置いてマウンドに上がることもある。すぐさまトップギアに入れられる技術とメンタリティーが求められる役割なのだ。
となると純粋に中川の役割を引き継げる投手としては松井か高梨が有力候補となるわけだ。
「いい選手を選ぶのではなく、どうやったらいいチームを作れるのか」
代表発表の席で稲葉監督が語ったこの言葉が、まさに国際大会に臨む代表チーム編成の難しさを物語り、代替選手の補充でもベースになるはずである。
もちろんレギュラーシーズンの実績も大事だが、それだけでも計れない。国際大会の経験や適応能力も選考の大きな要素となる。それが代表選考の難しさであり、周囲から見ればおやっと思える選考となる一因でもあるわけだ。
実はそれは東京五輪の日本代表「侍ジャパン」の選手選考全体にも言えることなのである。
2008年の北京五輪の代表選考と似ている
今回の選考結果にまず思ったのは、2008年の北京五輪の代表選考と似ているということだった。
あのときの星野仙一監督も前年に行われたアジア最終予選のメンバーを中心にチームを編成し、その選択には様々な意見が飛び交った。
開幕から調子が上がらずにプロ入り以来初めてスランプが原因で二軍落ちを経験した巨人の上原浩治投手を選んだこと。また腰痛でコンディション不良だった阪神・新井貴浩内野手や左臀部の故障を持っていた日本ハムで現役時代の稲葉監督らを選出している。アジア最終予選のメンバーを中心にしたチーム作りを選択した。
一方、今回の選考では全24選手中、半分の12選手が2019年の「プレミア12」で優勝したメンバーとなっている。