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「ギャンブルで生活費を稼ごうとして闇金から借金してた」木村翔が中国の英雄に奇跡の“36年ぶり”大番狂わせ…「あと6分で人生変えてこい!」
posted2025/05/12 11:03

北京五輪、ロンドン五輪金メダリストとして中国で圧倒的な人気を誇るゾウ・シミン相手に奇跡の勝利を収め、木村翔は人生を一変させた
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杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph by
Getty Images
無名の日本ランカーだった当時、27歳の木村翔はプロボクシングに見切りをつけようとしていた。厚生労働省から難病に指定されている潰瘍性大腸炎を患い、尻から出血していたこともある。病院に駆け込むと、医者からはリングに上がることを止められた。
さらに苦しかったのは経済状態。ぎりぎりまで追い詰められた時代を思い返すと、思わず苦笑が漏れる。
生活苦をギャンブルで補おうとして…
「鬼のような借金地獄だったんです。闇金からも金を借りて、負の連鎖に陥っていました。これは僕が悪いんですけどね」
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朝7時から16時頃まで酒屋の配達バイトをこなし、夕方からはジムワーク。ビールの樽や酒瓶を運んで汗水垂らし、給料は手取りで18万円程度だった。池袋近くの椎名町に住んでいた5畳一間の木造アパートは家賃5万円。光熱費、食費などを支払っていくと、どうしても生活費が足りなくなってくるという。
「18万円を25万円まで増やさないといけなかったんですよ。そこで僕は何をしたのか? 競馬にパチンコ……。金がないからギャンブルして、また借金が増えていく。まさに悪循環でしたね。きっと、こういう人って多いと思います。自分のせいですけど、さすがに生活が限界でした。最後にボクシングを続けてきた証としてベルトが欲しくて、会長に『タイトルマッチができないならもう辞めます』と伝えたんです」
ファイトマネー「なし」でなら
プロ叩き上げの木村を育ててきた青木ジムの有吉将之会長は東奔西走した。わずかな可能性を探るなか、WBOアジアパシフィック・フライ級王座決定戦の話が浮上した。対戦相手は六島ジムの坂本真宏。開催場所は相手のホーム、大阪だった。ファイトマネーなしの条件で交渉を進めれば、試合が決まるかもしれない。