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福島の公立進学校“御三家”は聖光学院を倒せるか? 楽しみな2人のエースが登場…国立大→プロを目指す大型左腕も
posted2021/06/04 17:15
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
Genki Taguchi
福島県には「御三家」と呼ばれる公立の進学校がある。磐城、安積、福島。この3校は、毎年のように東大合格者を輩出している。
参考までに、各校のホームページで公表されている直近の国公立大への進路状況は、以下の通りである。
磐城……117名(うち東大は4名)
安積……138名(うち東大は3名)
福島……193名(うち東大は6名)
※現役合格者のみ記載
全国的に際立った数字ではないかもしれないが、「御三家」が県内で評価されるのは、名門進学校でありながら部活動にも力を入れ、文武両道を実践するからである。
高校野球もその傾向が強い。
今年の春季大会。支部予選を通過し県大会に出場した磐城と安積に、夏の福島での躍進が楽しみな「御三家エース」が出現した。
【磐城高校】佐藤綾哉(3年・右投右打)
佐藤綾哉は、昨年、21世紀枠で46年ぶりのセンバツ代表校となった磐城で、2年生投手としてベンチ入りメンバーに選ばれた。夏に甲子園で開催された交流試合では、登板こそ叶わなかったが大きな財産を得られたと、佐藤は確信している。
彼に変化のきっかけを与えたのは、当時の3年生エース・沖政宗の投球だった。
甲子園での沖は状態が万全ではなく、最速141キロのストレートは130キロ台前半がほとんど。本来のパフォーマンスではないながらも、東京の強豪・国士舘を4失点で食い止めた。チームは敗れたが、佐藤は背番号「1」の背中を、その目に焼き付けていた。
「沖さんは調子が悪いなかでも、しっかりとゲームを作るピッチングをしていて。エースとして最後まで投げ切る姿も甲子園で学ばせてもらいましたし、改めて『こういうピッチャーになりたい』と思いました」
先輩から教わった「万全でなくとも投げ切る」
佐藤はもともと力投派の投手で、最速140キロのストレートで相手を圧倒できる一方、制球力に課題があった。先輩・沖のマウンド捌きに感化されたと言っても、新エースとして臨んだ昨秋はモデルチェンジするには時間が足りなく、まだ「三振を取りに行くピッチングでした」と、振り返る。そんな佐藤が、秋季県大会の準々決勝で敗退後、取り組んだのが下半身の強化だった。制球の安定やスタミナを養うために、シーズンオフは走り込みを徹底したのだと教えてくれた。