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野球の定説「ストレートは低め」も時代遅れ? 「今日が人生最後の試合でもいい」なんて言わないイマドキの高校生投手たち 

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氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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photograph byJIJI PRESS

posted2021/04/16 17:03

野球の定説「ストレートは低め」も時代遅れ? 「今日が人生最後の試合でもいい」なんて言わないイマドキの高校生投手たち<Number Web> photograph by JIJI PRESS

力投する中京大中京高の畔柳亨丞投手。畔柳いわく「ストレートは高めを効果的に使っていくようにしました」

「高校1年夏の大会で、僕が決勝点を浴びて試合に負けました。その時まではストレート主体のピッチングだったんですけど、そうなると真っ直ぐに頼らざるをえないので狙われてしまう。何かを変えないといけないと思い始めて、ツーシームを覚えるようになって、そこからピッチングが変わりました」

 今大会、三振をバッタバッタととることはできなかったものの、打者に球種の判別をつけさせない投球で戸惑わせ続けた。

 近年、メジャーやプロ野球の投手たちはテクノロジーを駆使したピッチングをデザインするようになった。

「ピッチトンネル」と呼ばれる理論だ。打者が球種の判別ができるのは打者から9メートルほどの位置だと言われていて、そこにトンネルを描いて、投手はどの球種もこのトンネルを通過するように投げる。トンネルまでは同じ球種に見えるので、打者はトンネルを抜けてからしかボールを判別できず、そこからの変化に対応できない――。

 小園自身はテクノロジーを使うことはない。しかし彼の中で打者を打ち取るためのイメージが、「記事で見かけただけ」というピッチトンネルで構成されている。

「多くのバッターはストレートを狙っているので、そこでツーシームを投げるとバッターの反応が変わってくる。カットボールも投げるようになったんですけど、小さい変化が効果的なのかな、と。バッターからすればツーシームがくるとわかっても、カットボールも頭にある。対角の変化を持つことによって(打者が)ストレートに詰まることが増えてきました」

指導者まかせではなく、個人で考える高校生たち

 情報が溢れる今の時代、スマホを持つリスクを大人たちは口にするが、使い方を間違えなければ、貴重な情報が簡単に得られる。達ら高校生投手たちはアンテナを張り巡らしてたくさんのことを得ようとしている。メジャーの情報やダルビッシュの発信。野球本を読み漁ること。それらは彼らにとっての成長要因なのだ。

 指導者の裁量のみによって成長が左右されるのではなく、個人で成功を掴み取っていく時代。そこではプロの選手の多くがパーソナルトレーナーを雇って高みを目指しているように、個人としての思考力こそが成長の要因になる。高校球児の思考力がそれほどのレベルまで高まってきているのかもしれない。

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