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8試合で9得点は“攻撃が単調すぎる”? 対湘南戦で見えた「川崎Fにあって名古屋にない」決定的な差とは
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJ.LEAGUE
posted2021/04/08 18:15
7日の湘南戦ではボールに絡む回数が少なく、周囲との連係もいまひとつに見えた柿谷曜一朗(名古屋)
点が取れないと勝てないとの反省から、今季は質の高い攻撃陣を獲得したが、FW登録で獲得したのは齋藤学と柿谷曜一朗で、彼らは4-2-3-1のセンターFWタイプではない。
「絶対的なストライカーがいない」
フィッカデンティ監督はそう語っていたが、湘南戦を見てもまさにその通りだ。川崎Fの小林悠やレアンドロ・ダミアン、セレッソ大阪の大久保嘉人のような点が取れるストライカーが不在だ。
ストライカーの存在がいかに大きいか。昨季J1リーグ戦7位に躍進した柏レイソルは今年エースのオルンガがいなくなり、現在8試合でわずか5得点、1勝1分6敗と大苦戦しているのを見ればわかる。名古屋では昨季9得点のマテウスに期待がかかっているが、彼はチャンスメーカーとして機能しており、フィニッシャーのタイプではない。
本来であれば点が取れる外国人ストライカーを獲得するのが手っ取り早い処置になる。今季は特に中盤戦から残留争いが厳しくなり、より得点が難しくなることが予想される。この致命的な得点力不足をどう解消するのか。
湘南戦はスコアレスドローに終わり、前節のFC東京戦と2試合続けて得点が取れていない。現在8試合9得点で、首位の川崎Fの22得点に遠く及ばない状況だ。
川崎Fとの差は「攻撃のバリエーション」
湘南戦後、前田は現状について、こう語った。
「もっと攻撃のバリエーションを増やさないといけない危機感を持っています。ゴールを取れていない状況が続いているので、守備のゼロをフォーカスしてもらうのではなく、攻撃のゼロを直さないといけない」
川崎Fとの違いは、その攻撃のバリエーションの差にある。
例えば川崎Fの攻撃パターンを見ていくと、三笘薫の単独突破もあれば、家長昭博ら複数の選手が絡んでコンビネーションで崩していく形もある。三笘のドリブル突破で終わるのではなく、パス、連係しての打開など、選択肢が多い。特にコンビネーションプレーは素晴らしく、お互いを知り、かつ動きの質とパスの精度が高いことがそれを可能にしている。
一方の名古屋は、個々の能力は川崎Fにも劣らない高さがあるが、単独突破が目立つ。この日の湘南は、相馬勇紀、マテウス、前田に対してドリブルさえ封じればという考えで人数をかけて守るなど、うまく対応していた。名古屋はサイドから攻めつづけつつ、ダイレクトを使う、ミドルを打つ、攻撃のテンポを変える等々、もっと工夫をすべきだった。