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「レアルはミスしないんだよ」CLでアタランタが味わった力負け… それでも「俺らは攻めるサッカー」を貫く 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2021/03/19 11:00

「レアルはミスしないんだよ」CLでアタランタが味わった力負け… それでも「俺らは攻めるサッカー」を貫く<Number Web> photograph by Getty Images

レアル・マドリーとの差は如実だった。それでもアタランタは前を向く

「うちがプレスをかけてもミスしないんだよ」

 アタランタには“強いパス”を放つ選手が欠けていた。この日、1.5列目で先発したMFパシャリッチやMFマリノフスキ、途中出場したFWイリチッチも誰ひとり、敵陣を突く度胸の据わった1本を打てなかった。

 パス成功率はレアルの86%に対し、アタランタは79%に留まった。

 うなだれたムリエルは試合後、ポツリとこぼした。

「レアルの選手たちはさ、うちがプレスをかけてもミスしないんだよ。どんなに詰めても、平然とパスをつないで、ゴール前をきれいに閉じてしまう。あんな守り方はセリエAでもそうそう見られない」

 指揮官に反目し、冬の移籍市場で放出されたMFゴメス(現セビージャ)がいてくれたら。そう言いたくなる口は塞いだ。

至極真っ当な結果に、サッカーの真実がにじみ出た

 打ちひしがれてはいるが、仮定の話にすがっても意味はないことぐらいわかっている。

 レアル・マドリーから大量ゴールを奪われて叩きのめされたのでもなければ、自分たちが無謀に仕掛けて自滅したのでもない。

 ただ技術と身体能力、メンタルの差がラフプレーや不可解な判定に左右されることなく、素直な形になって現れたと言うべきだろう。

 番狂わせを期待していた層には退屈な、しかし、ゲームの内容に照らし合わせて見れば至極真っ当な結果に、サッカーの真実の一端がにじみ出ている。

 2タッチ以内でテンポよく、強弱、長短をつけたパスをつないで攻守のリズムを作る。国内でできていることが、初めて戦うレアル相手にできなかった。一段上のステージでは「いつでもどこでも誰が相手でも平常心で戦う」という身上は通用しなかった。

 それが、2度目のCL決勝トーナメントでアタランタが得た苦い教訓だった。

敗れて心晴れやか、なんてフィクションの話だ

 敗れて心晴れやか、清々しいスポーツマンなんてものは、フィクションの話だ。負けてさっぱりした顔の指揮官なんて、CLでは見たことがない。

【次ページ】 「それでも、私は攻めるサッカーで」

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