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西野朗、内田篤人はどう“異文化コミュニケーション”を実践? タイ在住日本人指導者が語る“言語の壁”の乗り換え方
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2021/01/25 17:00
タイ代表を率いている西野朗監督。滝雅美氏もその指導法を耳にしたことがあるという
ドイツの名将デットマール・クラマーが「どのようなトーンで、どのようなスピードで、どのようなタイミングで言葉を話すかによって、伝わり方がまったく違う」ということを話してくれたことがある。
あらかじめ話したいことをスタッフに伝える
指導者が、大事なミーティングでモゴモゴしていたら、選手のテンションにも悪影響を及ぼしかねない。そのあたり、滝はどのように考えているのだろうか。
「僕のタイ語は正直中途半端で通じないところもいっぱいあります。タイ語で話しているつもりが、途中で英語が混じってしまうこともあります。でも選手を混乱させたらダメ。だから、スタッフとの打ち合わせを入念にするようにしています。あらかじめ『こういうことを話したい』というのを、英語とタイ語が話せるスタッフに伝えておくんです。
わからないことがあったり、食い違いがあったりしたらスタッフの言葉を信じてって、選手には伝えています。僕の言い方でうまく伝えられていないからで、僕とスタッフとは同じ言葉でわかり合っているからと」
内田はスケッチを描きながら質問を
コミュニケーションは工夫次第。言葉が話せなくても、とれるようになる。
例えば、内田篤人はシャルケに入団したばかりの頃に、同室の元ドイツ代表ベネディクト・ヘベデスに戦術やプレー原則についてスケッチを描きながら質問を繰り返していたという。
結局のところ、そこに伝えたいという意思があり、そのための努力とアイデアがあるかどうかではないだろうか。
海外に行けば何でもできるようになる、なんてことはない。乱暴な言い方だが、海外で指導者として学ぶことは誰にでもできる。
しかし、道なき道を切り開き、現地の人から信頼されて、責任あるポストのオファーを手にするためには、責任をもって解決策を見出していかなければならない。挑戦し続ける意志を持った人ならば、間違いなく、大きく成長できるチャンスがある。
「もっともっと多くの指導者の方が国内だけじゃなく、海外でチャレンジしてくれたらと思います。いろんな国があるんですよ。僕よりできる人はたくさんいると思っています。Jリーグクラブで指導するのは狭き門です。もし日本で燻っているという人、あるいは、やりたいことがあるのにできてない人がいるんだったら、ぜひチャレンジしてみたらと思うんです。一歩踏み出すのが怖いというのもわからなくはないけど、飛び出しちゃえば何とかなったりするんです」
世界は広い。そして、サッカーは世界中どの国でも行われている。
合う、合わないはもちろんあるが、答えは日本だけではない。思い切って飛び出して、辿り着いたその地に順応しようとあれこれ自分で試して、いろいろな人に助けられながら、自分にとって第二の故郷を見つけられたら素敵ではないだろうか。