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西野朗、内田篤人はどう“異文化コミュニケーション”を実践? タイ在住日本人指導者が語る“言語の壁”の乗り換え方
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2021/01/25 17:00
タイ代表を率いている西野朗監督。滝雅美氏もその指導法を耳にしたことがあるという
「今言いたいことは落ち着いて明日言おう」
「タイで暮らし、指導者として過ごす中で、とても我慢強くなりました。言いたいことがあったとしてもそこで言わずに一呼吸おいて、今言いたいことは落ち着いて明日言おうと思うようにしたんです。そして、明日になったらもういいやってなるんですよ(笑)。
そのあたりを、うまく消化できるようになりました。怒るよりも、どうすればみんなが動くかなと考えるようになりました。僕も若い時はストレス発散というか、やっぱりすぐ怒鳴っちゃったりしたことがあったけど。でも、怒鳴ることって物事を解決しようとしていないんですよね。そのあたりをすごく反省しました」
目の前で問題が起きれば、誰だってイライラするだろう。しかし、怒ったところで問題は根本から解決されない。自分、そして相手にとっても何もポジティブなことが生まれない。まず怒りを抑えて、どうしたら動いてくれるのか、好転させることができるかを考えるようになったという。
「明らかに困っている空気を作って」
「例えば、僕が『すご~く困っている』と話すとか。明らかに困っている空気を作って、『どうしたの?』と聞いてもらえたら、『いや、こういうことがあって心配してるんだ。これでチームを勝たせられるのかな』と深刻に話をする。そして『それは困ったね。どうしよう?』と一緒に悩んでもらえたら、一緒に動いてくれるようになるんです。
そのあたりはタイの人たちに成長させてもらいました。タイって悪い人がいないんです。仕事が遅いかもしれませんが、それは僕らの基準で見ているからなんです。彼らからすると『なんでそんなにせかす』とか、『なんでそんなに(仕事を)させる』という感覚がある。タイの人には、笑顔で距離を近づけていくことが大事なんです。
そのあたりに気づいてからは、彼らに心配させないようにニコニコして、気持ちよくプレーしてもらえるように気を使いながらやるようになりましたね。今はもうムリしなくても、自然とそうできるようになっています」
国が変わり、地域が変われば、民族性も変わってくる。好みも違えば、解釈だって違う。