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「高橋宏斗をうちで育てられるか?」高卒投手育成に中日のトラウマ ドラ1ブレイクのカギは“放置と外禁”?
posted2021/01/13 17:02
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph by
Kyodo News
中日の新人が、1月9日にナゴヤ球場で合同自主トレをスタートさせた。その2日前には隣接する「昇竜館」に入寮。支配下6人、育成3人の中で、ひときわ注目度が高かったのはドラフト1位の高橋宏斗である。
新型コロナの感染拡大により、春夏ともに甲子園は中止となったが、開催されていたら優勝候補の本命に中京大中京を推す声が多かったことだろう。そんな最強チームの中心にいたのがエースの高橋。高校の先輩である浅田真央がCMに出演している高級寝具を寮の自室に運び込んだ。
最速154キロを誇る本格派右腕。地元で育った世代最強投手の1位指名を、中日はドラフト会議前には公表した。高橋自身が進学からプロに進路を切り替えたことに、スムーズに対応。ところが、球団の一部には異論があったとも聞いた。その理由は高橋の能力に疑問があったわけではなく、他の候補者がいいという類いの意見でもなかった。なんと「うちで育てられるのか?」という声だった。
にわかには信じがたかったが、実際に調べてみると、なるほど……。高校からダイレクトで指名し、入団した投手が「育ってはいなかった」のである。わかりやすいのが「高卒投手の最新規定投球回数クリアシーズン」。高橋のように先発タイプなら、数年後には到達してほしい基準である。
「うちで育てられるのか?」は自虐でも暴論でもない
2020年は千賀滉大(ソフトバンク)、山本由伸(オリックス)、高橋光成(西武)、涌井秀章(楽天)、西勇輝(阪神)がクリア。西や涌井のように移籍選手だと育成には当たらないので、生え抜きに絞って過去へとさかのぼっていく。DeNA(三浦大輔)とヤクルト(八木亮祐)の2013年で11球団が消えた。つまり、最後に残ったのが中日だった。
さらに4年さかのぼって2009年の朝倉健太が、中日の高卒投手では最後の規定投球回数達成者。ちなみに球界が再編され、交流戦が導入された2005年以降、中日では朝倉の3度(2006、07)と昭和に入団した山本昌(2006)だけ。「うちで育てられるのか?」は、自虐でも暴論でもなかった。