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「高橋宏斗をうちで育てられるか?」高卒投手育成に中日のトラウマ ドラ1ブレイクのカギは“放置と外禁”?
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph byKyodo News
posted2021/01/13 17:02
新人合同練習に取り組む高橋宏斗(中央)。中日の柱となる“高卒投手”になれるのか、期待がかかる
かつての中日は高卒選手が支えるチームだった
朝倉が入団したのが2000年。その翌年から今年の高橋(同期の4人含む)まで、34人の高卒投手(育成5人)が入団している。中には通算532試合に登板した高橋聡文や、現役で50試合登板以上のシーズンが4度ある岡田俊哉など、リリーフとして成功した選手はいる。先発でも規定投球回数こそ達していないが、2015年に10勝した若松駿太や開幕投手も務めた小笠原慎之介がいる。ただ、昨シーズン限りで戦力外通告した鈴木翔太(阪神に移籍)も将来を嘱望されたドラフト1位だった。総じて言えばやはり育てられてはいないという印象だ。
しかし、かつての中日は屋台骨を高卒選手が支えるチームだった。エースの今中慎二、山本昌に捕手が中村武志、立浪和義、山崎武司と好打、強打のタレントがそろっていた。率いていたのは星野仙一。闘将と呼ばれた男は、選手に雷も拳骨も落としたが、次の日に必ず試合で使うことでも有名だった。
「胸を張って初勝利を飾れ!」
「僕以来、高卒の投手が育っていないんだとすれば、僕なんかは軽く超えていってもらいたいと思います。僕は(外れ1位だったので)河内(貴哉)に負けたくない一心でやっていました。3年目に勝つことができましたが、その前の年に星野監督から言われたことが今でも頭に残っています」
最後の教え子ともいえる朝倉は、2002年にプロ初勝利から一気に11勝。だが、ブレイクにつながる「きっかけ」は、その前年、0勝5敗に終わった年のある試合だという。先発し、失点は重ねたが味方の援護に恵まれ、勝ち投手の権利はすぐそこに見えていた。ところが星野監督は投手交代。そして朝倉を呼んでこう言った。
「おまえ、こんな打たれた試合が初勝利でええのか? しっかり抑えて、胸を張って初勝利を飾れ!」
非情ではなく愛情。その使い方を間違えては人は育たない。同じく闘将の薫陶を受け、沢村賞投手に羽ばたいた今中氏は、高橋の能力を高く評価している。その上で大きく育てるためのキーワードを2つ口にした。
「放置と外禁。特に高橋は地元だから」