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マラドーナはスキャンダラスな世界的英雄だった クライフ、ジダンと似て非なる庶民派のカリスマ性 

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田邊雅之

田邊雅之Masayuki Tanabe

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photograph byTakuya Sugiyama/JMPA

posted2020/12/28 11:01

マラドーナはスキャンダラスな世界的英雄だった クライフ、ジダンと似て非なる庶民派のカリスマ性<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama/JMPA

毀誉褒貶が激しかったマラドーナだが、それだけ世間が彼の人間性に注目していた証でもある

人間臭い、毀誉褒貶の激しいヒーローだった

 聖と俗、光と影、歓喜と悲哀。「神の手」と「5人抜き」の組み合わせにも似た二面性は、終始つきまとった。マラドーナは相矛盾する要素を、誰よりも強烈なコントラストで描き出したし、それが無類の人間臭さと魅力にもつながっていた。サッカー界広しと言えど、マラドーナほど極端で毀誉褒貶の激しい人物は、今後登場しないのではないか。

 さらに述べれば、スポーツを通してあれほど絶大な影響を及ぼし、社会全体の統合シンボルになれるようなサッカー選手も、もう現れないような気がする。

 2020年は新型コロナウイルス禍で、スポーツが持つ価値や意義、社会的な機能が改めて問われる1年になった。サッカー界が輩出した不世出のカリスマは、人々や社会を束ねるアイコンが最も必要とされている時に、突如として帰らぬ人となってしまった。

「神の手」でゴールを決められた時、イングランドの選手たちは「財布をすられた男」のように茫然自失となったという。

 僕たちもこれから折につけて、同じような喪失感を味わうことになるだろう。

 だが心の傷と悲しみが癒えたなら、また大声で笑い、人生とサッカーを愉しみながら生きていきたいと思う。ディエゴ・マラドーナのように。

前編の「戦術史から見たマラドーナの偉大さ」は関連記事からもご覧になれます)

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