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「ネガティブな感情は自分に跳ね返る」川崎の名将・鬼木達が大切にする「本気の言葉」とは
posted2020/10/29 11:05
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Getty Images
小さい子への指導って、これほど難しいものなの?
「川崎の宝」と呼ばれ、2006年シーズン限りで現役を引退した鬼木達はフロンターレに残って指導者に転身。年中児から小学生を対象としたスクールを担当することになったが、思った以上にうまく教えられない。最初は戸惑うことばかりだったという。
「“ボールを止める、蹴る”ができる以前の子供たちを教えるってなると、どうやって教えていいかが分からない(笑)。スクールの若いコーチは選手経験とかなくても、うまく教えているんですよね。
指導法を僕より年下のコーチに教えてもらって、同じようにやってみることから始めました。スクールのコンセプトが“楽しませる”だったんで、そこは僕も子供たちと一緒にボールを蹴って楽しくやろうとしました」
勝負の鬼が、仏の顔になった
サッカーを一緒になって楽しもう。
伊藤宏樹ら後輩からも怖がられた勝負の鬼は、仏の顔になって子供たちにとっても人気のコーチとなっていく。
つい最近までフロンターレで背番号「7」を背負っていた本物なのだから、子供も保護者も喜んでくれた。鬼木はさらにクラブが立ち上げたU-12でもコーチを務めることになる。
これには将来を見越したフロントの思いもあった。強化担当者の庄子春男はこう語る。
「プロを引退してすぐ指導者になると、実演することはできてもなかなか言葉ではうまく落とし込めない。やっぱりジュニア世代の指導から始めていけば、そういうところも学ぶことができる。そこは鬼木とも話をしながら方向性を出したとは思いますよ。
それだけじゃなくてトップチームで活躍した選手が指導にあたるようになれば、何より子供たちにとっていい刺激になる。当然、タイミングというものはありますけど、いずれトップチームで指導してもらいたいという思いはもちろんありましたよ」