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「ネガティブな感情は自分に跳ね返る」川崎の名将・鬼木達が大切にする「本気の言葉」とは
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byGetty Images
posted2020/10/29 11:05
風間監督(当時=左)をヘッドコーチとして支え、2017年からその座を引き継いだ鬼木監督(撮影 2016年)
コーチと監督では重みが違う
7年間のコーチ経験を経て学んだのが、言葉の大切さだ。
コーチと監督では重みが違う。監督が発する一言に、選手たちが敏感に反応していく光景を見てきた。
「高畠さん、相馬さん、風間さん。みなさん信念がそれぞれあって、近くにいるだけで勉強になりました。監督が自分なりの言葉で語り掛けることによって、選手たちも食いつくようにして聞く。借り物の言葉じゃなくて、やっぱり自分の言葉を持つことが大切なんだと実感を持ちました」
じゃあ、オレの言葉って。
いつしかそんなことを考えるようになっていた。
「本気の言葉じゃないと選手に伝わらない」
2016年シーズン限りで風間体制にピリオドが打たれることになり、鬼木ヘッドコーチの昇格が発表された。
庄子が打診した際、こう返ってきたという。
「クラブが築き上げてきた今のスタイルを継承するというのならばぜひやらせてもらいたい」
フロンターレの宝と呼ばれた男の、満を持しての監督就任。フロンターレで選手、育成コーチを経験してきた初めてのケースとなった。
ここからの活躍は説明の必要もないだろう。
就任1年目でリーグ初制覇、翌年には2連覇を達成。昨年は4位にとどまったが、ルヴァンカップ初優勝に導いた。
鬼木のこだわりは、本気の言葉だ。
「大切にしているのは、嘘をつかず、ごまかさず、きちんと向き合って……僕の場合、本気の言葉じゃないと選手に伝わらないと思うんですよ。でも結局それが自分のパワーにもなります。
そのためにも選手のことはしっかり見ているという自負はあります。日ごろのトレーニング、全体練習後の自主練習や日常の振る舞い。しっかり見たうえで選手選考しています。
ウチはハードワークや技術レベルもそうですけど“ここのレベルに達しないと出られない”というのをみんな分かってくれています。そしてずっとやり続けないといけないってことも」