JリーグPRESSBACK NUMBER
Excelを見ながら計算機で足し算する男・高木義成がサラリーマンを辞めて、GKの指導現場に戻った理由
posted2020/10/29 17:00
text by
石倉利英Toshihide Ishikura
photograph by
Yoshinari Takagi
今年9月、開設したばかりのツイッターアカウントでフォロワーに向けてクイズを出した。
「私がGKのプレーで一番難しいと思うプレーは何でしょうか?」
答えは「正面キャッチ」。シュートを、体の正面でキャッチする。ウォーミングアップの一環としても行われる基本中の基本を挙げたのは、プロ18年間のキャリアでも特に忘れられない一瞬が、そのプレーに凝縮されているからだ。
楢崎の負傷で巡ってきたチャンス
ADVERTISEMENT
修徳高(東京)、国士舘大を経て2000年にヴェルディ川崎(現・東京ヴェルディ)に加入した高木義成は、確かな技術をベースとした安定したセービングを武器に、02年途中から正GKとして活躍。名古屋グランパスに移籍した10年には出場機会ゼロながら、リーグ初優勝メンバーの一員となった。
連覇を目指した11年、シーズン途中に正GK楢﨑正剛の負傷で出場機会をつかむ。2位で迎えた第25節、4位の柏レイソルとのアウェーゲーム。名古屋は17分に先制したものの、65分に同点ゴールを決められた。
相手の勢いが増していく中で、70分に忘れられない一瞬が訪れる。相手の右サイドからのセンタリングが、ゴール前の高木に向かって飛んできた。
「ブレ球のようなボールが来たので『ヤバい』と思いました。でも基本に立ち返って、しっかり足を運んで正面でキャッチできていれば、あの失点はなかったんです」
キャッチできずにファンブルし、こぼれ球を押し込まれた。1-2の逆転負けで、高木は次の試合から控えに。名古屋は終盤に6連勝して最終節まで優勝を争ったものの、勝ち点71で2位に終わる。1ポイント差の勝ち点72で優勝したのは柏だった。