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ドジャース優勝だけど…「ファーム生え抜きが少ないのに強かった」レイズの“チーム構築術” 

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ナガオ勝司

ナガオ勝司Katsushi Nagao

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posted2020/10/28 14:20

ドジャース優勝だけど…「ファーム生え抜きが少ないのに強かった」レイズの“チーム構築術”<Number Web> photograph by Getty Images

2勝3敗で迎えたワールドシリーズ第6戦。3-1でドジャースが勝利し、レイズは優勝を逃した

 ドジャースがカーショウやジャンセンと「契約延長」したように、レイズにもキアマイアーやスネル、ロウら年俸調停権の取得=大幅昇給のタイミングに合わせて「契約延長」した選手がいるものの数は少なく、皮肉なことにそれが彼らの低予算運営を助けている。

日本とは全く異なるMLBの「年俸調停権」

 メジャーリーグの年俸調停権は日本プロ野球のそれとはまったく違う別物で、(基本的には)メジャー歴3年で権利を取得した後は同6年でFA権を取得するまで毎年、行使することが出来る。つまり、エンゼルスのトラウト外野手のように新人の年から毎年MVP級の成績を残されると、球団はその選手が年俸調停権を取得してから毎年、「契約更改」で自分たちの提示額では契約できない可能性が高くなるわけだ。

 そこで近年のMLBでは、有能な若手選手が年俸調停権を取得する前に長期契約を結ぶことがトレンドになっており、エンゼルスもトラウトが調停権を取得する前年に年俸100万ドルで「契約更改」を済ました直後、6年1億4450万ドルで「契約延長」するという妥協点を見つけている(著者注:トラウトの活躍は続き、2019年春に12年4億2650万ドルという史上最高額で契約を結んだ)。

 実はレイズも同様の考えに基づいて、2006年のドラフト1巡目(全体3位)指名で「ファーム生え抜き」のエヴァン・ロンゴリア内野手(現ジャイアンツ)と2008年のメジャー・デビュー直後に6年1750万ドルで「契約延長」した過去がある。

 それはロンゴリアがア・リーグ新人王となったこの年、レイズも球団史上初のア・リーグ制覇を成し遂げたことで「素晴らしい契約だった」と評され、2012年に6年1億ドルの球団最高契約で「契約延長」した際にも概ね好評だった。ところが度重なる故障などでロンゴリアの成績が次第に下降し始めると「コスト・パフォーマンス」が指摘されるようになり、結局は2017年、ロンゴリアの契約の残り8800万ドルの内1450万ドルなどを支払う条件で、ジャイアンツの4選手との「トレード」が成立している。

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