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カーショーの復調とドジャースの勝機。ポストシーズンに弱い大投手が“逆襲”を始めた!
posted2020/10/24 06:00
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph by
Getty Images
勝つも負けるもカーショー次第。
言い過ぎのような気もするが、ここ10年ばかり、ドジャースがポストシーズンに進出するたびにこの台詞がささやかれてきたような印象がある。
いうまでもないが、クレイトン・カーショーはドジャースのエースで、球界の至宝ともいうべき大投手だ。1988年3月生まれだからまだ32歳だが、デビュー後13年間でサイ・ヤング賞3回、MVP1回に輝き、通算奪三振数は早くも2526個に達している(2020年レギュラーシーズン終了時)。
カーショーは、ポストシーズンに弱い
ただ、これまたよく知られたことだが、この大投手は、ポストシーズンに弱い。今年のワールドシリーズ開幕前まで通算28試合に先発登板しているが、印象はあまり芳しくない。好投した試合もいくつかあるのだが、打たれた場面のほうが記憶に鮮やかだ。13年のNLCSと14年のNLDSで、どちらもカーディナルスに手ひどく打ち込まれた試合、17年のワールドシリーズでアストロズに痛打を浴びた試合などは、すぐにも思い出せる。
いま調べてみると、13年の試合は4イニングスで10安打を浴び、自責点7が記録されている。14年の試合では、6回3分の2で自責点8。17年の試合では、4回3分の2で自責点6。
レギュラーシーズン13年間の通算防御率が2.43なのに対して、2020年ワールドシリーズ開幕前のポストシーズン通算防御率が4.31。これほど数字の開きが出てしまうのは、10月のミステリーだ。
球速が落ちていたフォーシームが……
ただ、今年のカーショーは、去年までのカーショーではない。NLCS第4戦、ブレーヴスの若手打線につかまって致命的なダメージを受けたときは「悪夢の再来」という言葉が脳裏をよぎったが、10月20日のワールドシリーズ第1戦に先発した彼は、見事な投球術でレイズ打線を封じ込めた。
結果からいうと、6イニングスで78球を投げ、ストライクが53球。被安打2、奪三振8、与四球1、自責点1。堂々たる内容だが、それ以上に、思わず舌を巻くような風味があった。