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武豊「コントレイルは乗りやすいディープインパクトというイメージです」“歩く競馬四季報”が語る血統の面白さ
text by
片山良三Ryozo Katayama
photograph byAsami Enomoto
posted2021/04/11 06:00
「血統を見ることが昔から好きだった」と語る武豊がその魅力を語った
ベガもエアグルーヴも、いい仔ばかり産んで
武のキャリアでは、'94年のリーディング種牡馬トニービン('83年愛国産)の存在も忘れてはいけない。トニービンを父に持つベガ('93年桜花賞、オークス)、エアグルーヴ('96年オークス、'97年天皇賞・秋)の2頭の牝馬は'90年代の武を語るうえで欠かせない。そして、それぞれの実績もさることながら、母として前者がアドマイヤベガ('99年ダービー)、後者がアドマイヤグルーヴ('03、'04年エリザベス女王杯)を送り出し、武と共に母仔GI制覇を果たした。この2頭は共にサンデーサイレンスを父に持つ。
「ベガもエアグルーヴも、いい仔ばかり産んで凄かったですね。昔、北海道でトニービンの運動に乗らせてもらったことがあるんですよ。やっぱり産駒同様、歩様は硬かったです(笑)。トニービン産駒は決して柔らかくはないけど、ひたすらに自分の力を出して走るイメージ。アドマイヤベガもアドマイヤグルーヴも、その特徴にサンデー産駒特有の鋭さを両方兼ね備えていて、まさにトニービンとサンデーだな、というのが良くわかる乗り味でした」
前進気勢に優れたサイレンススズカとディープ
JRAのGIで武がこれまでにあげた77勝中、26勝がサンデーサイレンス産駒で、頭数にして46頭中、15頭を占めている。さらにその孫世代を含めると、40勝、23頭と増えていくから、その関係の深さがわかる。
「ボクにとって、実にいいタイミングでサンデーサイレンスの時代が来ていたんです。トップジョッキーはトップサイヤーの仔に乗る機会が多いわけで、ボク自身、サンデーの新馬を頼まれたらそれだけで期待しました。厩舎やオーナーの期待馬というと、たいていはサンデーでしたから。振り返ってみれば、産駒の気性的な特徴は徐々に変わっていきましたよ。マーベラスサンデーのような難しいタイプや、ダンスパートナー('95年オークス)、ダンスインザダーク('96年菊花賞)、スペシャルウィーク('98年ダービーなど)のような、ちょっととぼけた気性で長く先頭を走れない馬が多かったんですが、最後の方には気持ちも前向きな産駒が増えていました。意外と思うかもしれませんが、前進気勢に優れた馬の代表は、サイレンススズカとディープインパクトです」