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武豊「コントレイルは乗りやすいディープインパクトというイメージです」“歩く競馬四季報”が語る血統の面白さ
text by
片山良三Ryozo Katayama
photograph byAsami Enomoto
posted2021/04/11 06:00
「血統を見ることが昔から好きだった」と語る武豊がその魅力を語った
コントレイルはディープインパクトらしさ満載
「58秒で逃げて58秒で上がれる馬」と、理想のサラブレッド像を武が夢見たサイレンススズカが前進気勢の塊だったことは競馬を見ているだけでよくわかったが、ディープインパクトが同じタイプだったとはまさに意外だ。
「前向き過ぎるぐらい前向きでしたよ。行かせてしまったら、絶対に行き過ぎてしまうと感じたので、前半は抑えるだけでした。長く脚を使えるし、一瞬の脚も持っている。先頭に立たせても、ゴールに向かってグイグイ伸びていくところは、サイレンススズカもディープインパクトも同じでした。そしていまコントレイルを見ていると、ディープインパクトらしさが満載の馬だなと感じます。乗ったことはないけど、乗りやすいディープインパクトというイメージですね。サンデーサイレンスが晩年にディープを出して、ディープも晩年にコントレイルを出した。理屈は全然わかりませんが、そんなところまで似てくるものなのかな、と」
サンデー系に噛み合うストームキャット
サンデーサイレンス以上の勢いで結果を出し続けてきたのが、種牡馬ディープインパクト。その後継争いも過熱気味だ。
「サラブレッドは競走を終えたあとも大変です。だからこそ、自分が乗った馬には肩入れしたいんですよね。メジロマックイーン('90年菊花賞など)は、種牡馬としてその高い能力を直に伝える産駒は残念ながら少なかったけど、母の父としてステイゴールド('01年香港ヴァーズ)の産駒(オルフェーヴル、ゴールドシップなど)に世界レベルのスタミナを伝えたでしょう? ああいう流れはうれしいですよね。
ディープインパクト産駒の種牡馬なら、キズナ('13年ダービー)が好スタートを切っています。競走馬としては苦手な形になったときに脆い面がある馬でしたが、面白いことに産駒は苦手なしのオールマイティー。短距離でも長距離でも、芝でもダートでも結果を出して、自力で評価を上げています。母の父がストームキャット('83年米国産)で、この血が日本の競馬にマッチするスピードタイプ。この長所がサンデー系とうまく噛み合っているんでしょう。
エイシンヒカリは、ボクが乗ってフランスでGIを勝ったディープの仔。初年度産駒の初勝利はこの前(9月6日小倉、エイシンヒテン)ボクであがったんですが、いいフォームで走ると感じました。これも母の父はストームキャットで、日本の競馬に合うと思います。成績を上げて、産駒の数を増やしていってほしいです」