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収益化に苦戦するプロラグビーの現実。
トップリーグ大物移籍の背景とは。
text by
竹鼻智Satoshi Takehana
photograph byRomain Biard/Icon Sport via Getty Images
posted2020/07/27 07:00
来季NTTコムへの加入が決まったSHグレイグ・レイドロー。「試合数が少なく、待遇がいい」トップリーグは魅力的な移籍先なのか。
「日本に住みたい」選手はたくさんいる。
ラグビーがメジャースポーツとしての地位を確立する強豪国ですら厳しい状況に置かれる、プロラグビーというビジネス。収益を確保する為、試合数は選手たちの肉体的限界まで増やされる中、トップリーグは選手たちにとっては当然魅力的な移籍先に見える。その上、日本には国として人を惹き付ける魅力もある。
「治安の良さや、食文化をはじめとした独自の文化などを理由に、個人的に日本を訪れたい、或いは数年間でも住んでみたい、と言う選手は本当にたくさんいます。ラグビーを離れた一般のイギリス人の間でも、日本という国の人気は高いです」
ロンドンに拠点を置く法律事務所、CDSメイフェアで日本への移籍を希望するスポーツ選手のエージェントを務める松崎豪氏は、観光立国としての道を目指す日本が持つ魅力を、追い風要素の1つとして指摘する。
ガラパゴス型か、ジャパン・ウェイか。
2021年秋以降の開幕を目指す日本ラグビーの新リーグだが、各チームが独立採算を成り立たせるようなモデルは目指していない。親会社などの形で、これまで母体となっていた企業がクラブを経済的に支援しながらも、独立組織となったクラブが、これまでとは違った形で収益の確保に努めるという形が現在の想定だ。
結局は大企業の財布に頼っている、という点を揶揄する人もいるかも知れないが、先述の通り、ラグビー先進国のクラブでさえパトロン頼りの経営であったり、投資ファンドに食い物にされる危機にさらされているのが現実だ。企業の参画形態や、選手の雇用形態では今後も日本独自の形を保っていくだろうが、これはガラパゴス現象の残念な産物か、或いはジャパン・ウェイとして誇れる日本独自のやり方か。
これまでのトップリーグの問題点である、母体企業の経済的負担を軽減するだけの興行収入が得られるか否かが鍵となるが、この課題がクリアできれば、新トップリーグはこの先も世界の大物選手を惹き付けるだけの魅力を保てるだろう。
外国人選手の大量移籍は、未来の日本代表選手の出場機会を奪うことにも繋がるが、これは外国人選手枠を適切に保つ、という課題として取り組まれる。
どちらの課題も簡単なものではないかも知れないが、大物選手たちの母国のクラブが課されている厳しい状況と比べて、どうであろうか。新トップリーグの成否を判断する基準の一つとして、今後どれだけ世界の有名選手が移籍してくるか、という点に注目してみるのも面白いかも知れない。
学生時代から注目しているひいきの選手が、世界の一流選手としのぎを削るような試合を観ることのできるトップリーグは、ファンにとって最高のエンターテイメントであることは、間違いないのだから。