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収益化に苦戦するプロラグビーの現実。
トップリーグ大物移籍の背景とは。 

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竹鼻智

竹鼻智Satoshi Takehana

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photograph byRomain Biard/Icon Sport via Getty Images

posted2020/07/27 07:00

収益化に苦戦するプロラグビーの現実。トップリーグ大物移籍の背景とは。<Number Web> photograph by Romain Biard/Icon Sport via Getty Images

来季NTTコムへの加入が決まったSHグレイグ・レイドロー。「試合数が少なく、待遇がいい」トップリーグは魅力的な移籍先なのか。

CVCキャピタル・パートナーズの存在。

 そんな中、昨年5月に同コラム内でも紹介したルクセンブルクに本拠地を置く投資ファンド「CVCキャピタル・パートナーズ」が、プロラグビー界にその触手を伸ばしている。CVCは2018年にイングランドのプレミアリーグの運営会社、プレミアシップ・ラグビー・リミテッドの27%の株式を購入。その後、プロ14(アイルランド、ウェールズ、スコットランド、イタリア、南アフリカの上位クラブで構成されるリーグ)の株式も取得した同社は、現在シックスネーションズ主催組織の株式購入交渉の最終段階にいると言われている。

 さらに同社は、4年に1度南半球への遠征を行う、イングランド、アイルランド、ウェールズ、スコットランドのオールスターチームであるブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズの株式購入の交渉にも入っているとされており、欧州のプロラグビー界に積極的な投資を行っている。

「助ける」ではなく「利用する」。

 ビジネス面で困窮するラグビー界に投資が行われるのは朗報に聞こえるかも知れないが、投資ファンドはラグビー界とは違う目線でラグビーを見ていることを忘れてはならない。

 CVCは、プレミアシップの昇降格制度の廃止や、これまで英国内では無料地上波で放送されていたシックスネーションズの有料放送化を提案するなど、ファンをはじめとしたラグビーの当事者を完全に無視した方向へと圧力をかけている。投資ファンドの仕事をしているだけと言えばそれまでだが、ラグビーを純粋な金儲けの対象としてしか見ていない同社の動きには、懸念の声も強い。

 そして、コロナ禍により更なる経済的困窮に陥る世界のプロラグビー界は、CVCに対する交渉力が弱まっている可能性が高い。

「CVCは、コロナ禍によりラグビー界が収入減に苦しんでいる状況を見て、助けるというよりは、苦境を利用する方向へ動くだろう」

 クラーク氏の指摘は、ラグビーファンとしては聞きたくない言葉かも知れないが、これが現在のプロラグビーの現実であることは否定できない。世界のラグビー界に精通するビジネスマンである同氏だが、1980年代には神戸製鋼でスタンドオフとしてプレーした経験も持つ、根っからのラグビー人だ。世界のプロラグビーの今後を危惧しながらも、冷静に現実を指摘する氏の言葉には、説得力がある。

【次ページ】 「日本に住みたい」選手はたくさんいる。

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