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東洋大エース・村上頌樹はプロ向き。
4年間の研磨でドラフト上位候補へ。 

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栗田シメイ

栗田シメイShimei Kurita

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photograph byKyodo News

posted2020/07/19 11:40

東洋大エース・村上頌樹はプロ向き。4年間の研磨でドラフト上位候補へ。<Number Web> photograph by Kyodo News

2016年センバツを制した実績を持つ東洋大・村上頌樹。高校時代に凌ぎを削ったライバルや大学の先輩たちの活躍に刺激されながら、着実に成長してきた。

初めての挫折、教わった3つの球種。

 甲斐野、上茶谷、梅津が最終学年となった2018年。2年目を迎えた村上は壁にぶつかっている。

 登板数はわずか6試合で投球イニングも20を切り、リリーフ待機の場面が増えた。高校1年秋からエースとしてマウンドに上がってきた村上にとって、先発以外の役割を任されることはほとんど初めてに近い経験でもあった。

「2年時は試合に絡めなくて悔しい思いをしました。あれだけ投げられないことは野球人生で経験したことがなかったので。それでも登板機会が少ないからこそ、3人の先輩方から多くのことを学べました。

 上茶谷さんからはストレート、梅津さんからはスライダー、甲斐野さんからはフォークを教わった。大学トップレベルの選手から直接3球種を学べた自分は贅沢だと思います(笑)。特に甲斐野さんからはリリーフ時の準備や心構えなど、投手として自分とは異なる考え方を学びました。そのことは去年、先発に戻ってからも活きてきた」

変化球を投げ分けてカウントを稼げる。

 3人の卒業した'19年、村上は名実ともにエースと呼ぶにふさわしい活躍をみせる。

 '19年春は6勝0敗の無敗でリーグMVPに輝く。70イニングを投げ、防御率は 0.77と圧巻の投球内容だった。続く秋も3勝を挙げ、防御率は1.26を残すなど飛躍の1年となった。

 高校時代から「自分の生命線はコントロール」と、言い続けてきた村上だが、昨季はまさにその投球術の進化を印象づけた。縦横のスライダーに100キロ台の緩いカーブ、チェンジアップにフォークと多彩な変化球を低めに集める制球力は、3年生ながら大学球界でも屈指に映った。

 特定の球種のコントロールに自信を持つ投手は珍しくない。ただ、村上のように内外高低を変化球で投げ分けてカウントを稼げる投手は少ない。あらゆる球種で内外の出し入れを投げ分けできることが、レベルの高い東都で村上が安定した成績を残している要因だろう。大学では特に2つの球種が特に伸びた、と村上はいう。

「昔は今ほど自信を持ってスライダーを投げられなかったんです。それが今ではスライダーで左右高低をある程度狙いながらカウントを稼げるようになり、曲がり幅も大きくなった。高校時代よりカーブを多投するようになったのも、上を見越し緩急で打ち取ることを意識しているからです。カーブの精度が高まり、ストレートもより活きるようになった。岸孝之投手(楽天)は自分が目指す方向性でもあり、動画でフォームや球筋をチェックしていますね」

【次ページ】 「自分に足りないものは意識してきた」

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村上頌樹
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