「プロ注目」もあっさり進学を決断。

　身長175センチと決して体格に恵まれているわけではなく、150キロの豪速球で打者をねじ伏せるタイプでもない。多彩な変化球とキレのあるストレートを低めに集める制球力が真骨頂の、いわゆる“試合を作れる”ピッチングスタイルだ。完成度が高く、高校生レベルを越えた投球術を持つ村上には当然プロの食指も動いた。それでもあっさり大学進学を選択した理由をこう回顧する。

「もともとは小さい頃から絶対にプロでやりたいと思っていました。それでも同級生の藤平（尚真・楽天）や寺島（成輝・ヤクルト）、今井（達也・西武）に堀（瑞輝・日本ハム）といった投手と自分の投げる球を純粋に比較した際、質や単純なスピードの面で差は感じていました。客観的にみて、今プロにいっても勝負できる力があるという自信が持てなかった。だから大学に進学して、力をつけるのが最善だと考えました。

　その中で選抜前から声をかけて頂いた東洋大に進学を決めたんです。それでも自分は極度の負けず嫌いなので、4年後にはプロに進んだ同級生達を絶対追い越してやると心のなかで誓いました」

　進学後は名門・東洋大学の投手陣の中で先輩を差し置き、1年時から登板機会に恵まれた。春のリーグ戦では専修大学戦で初完封するなど、新人賞を受賞。少しでも甘いボールは木製バットでも痛打されるなど、対峙する打者のレベルの高さに驚いたが、同時にこの環境なら成長できるという手応えも感じていたという。

　大学での滑り出しは順調だった。

近年、即戦力を輩出する東洋大。

　東洋大といえば、一昨年にドラフト1位で甲斐野央（ソフトバンク）、上茶谷大河（DeNA）、ドラフト2位で梅津晃大（中日）の3投手が上位指名されたことでも記憶に新しい。東洋三羽烏と呼ばれた3投手は、いずれもルーキイヤーから強烈な印象を残している。同年は中川圭太もオリックスに入団し、昨季はレギュラーとして活躍するなど、同学年4人がプロで即戦力になるという近年まれにみる当たり年だった。

　その3つ上の世代には原樹理（ヤクルト）が、現役選手には他にも鈴木大地（楽天）、藤岡貴裕（巨人）、大野奨太（中日）、清田育宏（ロッテ）といったOBを輩出するなど球界でも一大勢力を誇る。

　そんな名門でエースとしての立場を掴むには時間を要した。

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