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久保竜彦の忘れられない左足一閃。
あのチェコ戦が今も心に残る理由。
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戸塚啓Kei Totsuka
photograph byAFLO
posted2020/04/28 20:00
![久保竜彦の忘れられない左足一閃。あのチェコ戦が今も心に残る理由。<Number Web> photograph by AFLO](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/d/9/700/img_d922c40a3c07f4c6aa9763b8c01fe103150544.jpg)
久保竜彦は純粋に点を取ることに特化していた。ポリバレントとは程遠いが、それゆえにファンに夢を見させる選手だった。
宮本も俊輔も高原も中田も欠場。
ベストメンバーを揃えてきたチェコとは対照的に、日本は主力が欠場していた。3月に行われたドイツW杯1次予選のスタメンでは、宮本恒靖、中村俊輔、高原直泰がケガで合流できなかった。プラハへやってきたキャプテンの中田英寿も、足の付け根の痛みから欠場を余儀なくされてしまう。
ケガ人に代わって招集した選手が「クラブで慣れている」という理由から、ジーコは直前のハンガリー戦で3-5-2のシステムを選択した。ブラジル人指揮官は2-3で競り負けた3日前に続いて、チェコ相手にも3-5-2で挑む。3バック中央の田中誠と同左サイドの茶野隆行、右アウトサイドの西紀寛は、ハンガリー戦で国際Aマッチにデビューしたばかりだ。久保と2トップを組む玉田圭司も、チェコ戦が3試合目となる。彼我のメンバーと戦術の練度を比較すれば、日本の劣勢は明らかだった。
多彩なFWの中でも久保は異質な存在だった。
逆説的に考えれば、それでも勝ったところにこの試合の価値がある。試合翌日の新聞各紙には「金星」の文字が躍ったが、海外組が急速に増えていったジーコのチームは、日本代表の歴史でも群を抜いて選手層が厚かったと言える。
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FWにはタイプの異なる選手が揃っていた。本格派の高原と万能型の柳沢敦を筆頭に、ポストワーカーの鈴木隆行、スピード豊かなドリブラーの玉田、ジョーカータイプの大黒将志、空中戦に強い巻誠一郎、一発を秘める大久保嘉人、ワンタッチゴーラーの佐藤寿人らが、ジーコのもとでポジションを争っていくことになる。
キャラクターがはっきりとした選手が揃っているなかでも、久保は異質な存在だったと言える。
力強さがありながらもしなやかで、ダイナミックでありつつ粗さはない。ゴール前で軽やかに身を躍らせるアクロバティックなゴールには、「規格外」という表現も当てはまっただろう。左利きのストライカーというのも、セールスポイントである。