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久保竜彦の忘れられない左足一閃。
あのチェコ戦が今も心に残る理由。
posted2020/04/28 20:00
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph by
AFLO
2004年4月28日の試合と言われても、ピンとくる方は少ないかもしれない。
それでは、ジーコジャパンのチェコ戦と言えば?
「ああ、あの試合か」と頷くサッカーファンは多いに違いない。そして、前半33分のゴールシーンが記憶から引き出されてくるだろう。
右サイドからドリブルで持ち込んだ久保竜彦が、ペナルティエリア内から左足を振り抜く。重量感のある一撃が、ゴールネットに突き刺さる。青空が眩しいプラハのスタジアムに、「ズドン!」という音が響き渡った。
日本人からすれば、久保のマークがあまりに緩い。ドラゴンと呼ばれた左利きのストライカーは、2月に行われたオマーンとのドイツW杯1次予選でゴールを決めていた。しっかりとした情報を持っていれば、利き足の左足で打たせない対応をしただろう。
20戦不敗だった「最強」のチェコ。
もっとも、十分なスカウティングなしでも日本を倒せる実力を、当時のチェコが備えていたのは間違いない。カレル・ブリュックナーが率いるチームは、2001年11月のベルギー戦から直前の2004年3月まで20戦不敗の記録を打ち立てていた。とりわけホームでは10勝1分と、圧倒的な強さを見せている。
2003年欧州最優秀選手で主将のパベル・ネドベド、トマシュ・ロシツキー、ミラン・バロシュ、ヤン・コレル、マレク・ヤンクロフスキーらの主力選手は、イタリア、イングランド、ドイツなどのクラブで存在感を示している。
21歳のGKペトル・チェフは、フランスのスタッド・レンヌで国際的な評価を高めつつあった。スパルタ・プラハ所属のカレル・ポボルスキは、マンチェスター・ユナイテッドやラツィオでプレーした32歳のベテランである。