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フェデラーvs.同世代ロディック。
ウィンブルドン決勝の切ない結末。 

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山口奈緒美

山口奈緒美Naomi Yamaguchi

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photograph byGetty Images

posted2020/04/15 11:30

フェデラーvs.同世代ロディック。ウィンブルドン決勝の切ない結末。<Number Web> photograph by Getty Images

4時間を超える激闘の末、たたえ合うフェデラーとロディック。絶対王者と同世代だったテニス人生、様々な感情が絡みあっただろう。

最終セット、第30ゲームまで……。

 第1セットはロディック、第2、第3セットはともにタイブレークでフェデラー。ロディックにとって6-2でセットポイントを握っていた第2セットのタイブレークを奪われたことは痛恨の極みだったが、にもかかわらず集中力を切らさず、第4セットをワンブレークでものにして最終セットに持ち込む。

 グランドスラムでの両者の対戦は過去7回あったが、第5セットまでもつれたのは初めてだ。

 武器のサーブのみならず、ベースラインでもネットでも正確で我慢強いプレーを見せるロディックは、恐らく“ロディック史上”最高の姿だった。タイブレークのない最終セットは、互いにブレークポイントすら握らせずに8-8まで進行したあと、ついにロディックがマッチポイントに等しいダブル・ブレークポイントを握る。

 しかし研ぎ澄まされた集中力でしのいだフェデラーに、このセット初めてのブレークポイント、そしてマッチポイントが訪れたのは15-14で迎えた第30ゲーム、2度目のデュースのあとだった。最後はフェデラーの深いバックハンドに食い込まれ、ロディックのフォアハンドはコントロールを失ってコートの外へ高く舞い上がった。

いつもはフェデラー贔屓の客も。

 4時間18分の攻防で、ロディックが許したブレークはこのラストゲームだけ。奪い合ったゲームの合計数は77。これは今でもウィンブルドンの決勝における最多記録である。

 いつもはフェデラー贔屓の観客もこの日ばかりはロディックに心を寄せた。万雷の拍手の中、マイクを向けられたロディックは胸が張り裂けそうな痛みを精一杯隠し、ロイヤルボックスのほうを向いて親しい友人に話しかけるように言った。

「ごめんよ、ピート。阻止しようとがんばったんだけど」

 黒いサングラスをかけたレジェンドは口元に優しい笑みを浮かべていた。

【次ページ】 「僕は5回優勝していた。それでも」

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ロジャー・フェデラー
アンディ・ロディック

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