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フェデラーvs.同世代ロディック。
ウィンブルドン決勝の切ない結末。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byGetty Images
posted2020/04/15 11:30
4時間を超える激闘の末、たたえ合うフェデラーとロディック。絶対王者と同世代だったテニス人生、様々な感情が絡みあっただろう。
二強に弾かれた男、ロディック。
すばらしい試合であればあるほど、ときに結末はどう転んでも残酷だ。勝利も敗北も同様に扱う?
時間がそうさせることもあるが、何年経とうが到底無理なこともある。
2009年のウィンブルドン決勝は、まさにその後者だろう。
前年ナダルに奪われたタイトルの奪還と1位返り咲きを狙うフェデラーと、3度目の決勝で初の栄冠に懸けるアンディ・ロディックが繰り広げたファイナルセット16-14の激闘の結末は、単なる目撃者でありながら今思い出してもなお切ない。
時はフェデラーとナダルの二強の全盛期。ウィンブルドンの決勝も過去3年連続でこの二人が争っていた。フェデラーの1つ下だがフェデラーよりも先にナンバーワンに上り詰めたロディックは、この二強時代に弾かれた大物の1人といっていい。
復活を遂げたビッグサーバー。
2003年のウィンブルドンで初のメジャー優勝を果たしたフェデラーと、同年の全米オープンを制したロディック。新たなライバルの時代の幕開けと期待されたが、そうはならなかった。
フェデラーがピート・サンプラスに並んで男子では当時史上最多記録となる14のグランドスラム・タイトルを積み重ねてきた一方で、ロディックは21歳でのあの栄冠が最初で最後。2004年と2005年のウィンブルドン、2006年の全米オープンと、決勝でロディックを破ったフェデラーが通算対戦成績も18勝2敗と圧倒していた。
最速で245キロのサーブを記録したこともあるロディックだが、過去3年のウィンブルドンでの成績は3回戦、ベスト8、2回戦。チャンスが大きいはずの芝でさえもうタイトル争いは無理と思われていた元王者が、敏腕コーチを招き、新婚の妻の支えとともに肉体改造にも取り組んで復活を遂げたのが、この2009年だった。
とはいえ、フェデラー相手では勝ち目がないというのが大方の見方。グランドスラムV15という大記録達成がかかった一戦は、ロイヤルボックスの最前列でサンプラスも見守る中で幕を開けた。