フランス・フットボール通信BACK NUMBER
差別と戦ったミーガン・ラピノー。
メッシ、ロナウドらを痛烈批判。
text by
クリストフ・ラルシェChristophe Larcher
photograph byLionel Hahn/L'Equipe
posted2020/03/22 11:55
彼女の存在は、サッカー界、スポーツ界を越え、多くの人々に勇気を与えるアイコンとなった――。
「ロナウドやメッシがメッセージを発したら……」
――孤独を感じますか?
「もちろん! 男子サッカーには様々な問題があるのに、彼らは何もしようとはしない。それは巨額のお金が動いていて、余計なことをするとすべてを失うという固定観念に囚われているからでしょう。彼らはそう信じているけど決して正しくはない。
ロナウドやメッシが人種差別や性差別に反対するメッセージを発したら、それを無視できる人間はサッカー界にはいない。逆に広範な支持を得るのは間違いない」
――映画の世界では、ハーベイ・ワインスタイン(米国の著名な映画プロデューサー)のスキャンダルが性差別の悪癖をなくす方向へと向かいましたが、サッカー界もインスパイアされるのでしょうか?
「ワインスタインのスキャンダルは、被害を受けた人々が“#MeToo”で次々に彼を告発し、“Time'sUp(アンチ・セクシャルハラスメント)”からやがては“Black Lives Matter (黒人に対する警察の暴力の告発)”にまで繋がっていった。性差別も人種差別も同性愛差別も、すべては通底している。人々の振りあげたこぶしが、世界的な運動を引き起こし得る。
ワインスタインを告発した記事が、あれほどまでの勇気を人々に与えるとは当初は誰も想像できなかった。彼の権力は、映画界ではそれほどまでに強大だった。それが最初はひとりであったのが、やがてふたりになり5人になって……最終的には有名女優を含む100人以上の女性が彼を告発した。
ワインスタインのケースは、スポーツや他の世界でもサラリーの平等や人種差別、セクシャルマイノリティへの差別に対して戦うモデルとなり得る。雪だるま効果が起こることは大いに期待できる」
「無菌室の中で純粋培養」のスーパースター。
――では、サッカー界のスーパースターたちが沈黙を貫いているのはどうしてだと思いますか?
「子供のころから卓越した才能に恵まれた彼らは、無菌室の中で純粋培養された。成長を阻むものは何もなく、瞬く間に巨額の富を得て、最高の舞台が用意された。現実の世界から隔離されたまま、20歳になるころにはすべてを手にした。
私は性差別の被害者でありセクシャルマイノリティとしての苦痛も味わったけど、彼らは称賛しか受けていない。自我の問題を乗り越えなければならないのは彼らの方でしょう。
他方で進んだ教育を受けた感性豊かなアスリートは、怒りを感じるテーマに対してこれまでもメッセージを発してきた。若い女性アスリートが社会への意識を深めるためには、月末の給与明細を見るだけでこと足りるのだから」