フランス・フットボール通信BACK NUMBER
差別と戦ったミーガン・ラピノー。
女子バロンドールの闘士の素顔とは?
posted2020/03/22 11:50
text by
クリストフ・ラルシェChristophe Larcher
photograph by
Benjamin Schmuck/L'Equipe
これから2回にわたり掲載するのは、昨年末の『フランス・フットボール』誌に掲載された、クリストフ・ラルシェ記者によるラピノーのロングインタビューである。口をついて出てくるのは単なる受賞の喜びではない。マイノリティの権利・利益のために戦う“ミリタン(社会活動家)”としての先鋭なメッセージの数々である。
アメリカがワールドカップを連覇し、ラピノーがバロンドールとFIFA最優秀選手賞を受賞したからこそ、言葉は力を持ち世界を変える契機ともなったのだろう。彼女が発する言葉の意味に、読者の皆さんも真剣に向き合って欲しい。(監修:田村修一)
たった1人で取材の場に現れたラピノー。
マイクを前にしたとき、彼女が期待外れになることはあり得ない。マイノリティの代弁者を自負するミーガン・ラピノーは、男子にも同じ期待を寄せるのだった。
扉が開くや否や、彼女はフランス語でこう語りかけてきた。
「ボンジュール・ラ・フランス!」
場所はシアトルのウェスティン・ホテルにあるセント・ヘレン・サロン。そこに彼女はたったひとりでやってきた。彼女ほどのスターが、代理人も広報もスタイリストも同伴せずに登場するのは極めて珍しい。
「それは私が大人だから。男性はみんな子供で、常に周囲に誰かいないと何もできないの」
このひと言でインタビューのトーンが決まった。
リラックスした雰囲気ながらもプロフェッショナリズムに溢れる彼女は、真剣な眼差しで正確に言葉を発した。このしばらく後には、実生活のパートナーであるスー・バード(2004年アテネから2016年リオデジャネイロまで、4大会連続で五輪金メダルを獲得した女子バスケット選手)と、メキシコにバカンスに出かけるという。
「そう、ワールドカップから今まで、私には休息のときがなかったから……」
2時間におよぶインタビューとフォトセッションは、こうして始まったのだった。
「何か特別なことができる自信があった」
――今年(2019年)はフランスに来るたびに何かトロフィーを獲得していますね。
「フランスは大好き。ワールドカップのときから、私は人々の熱い支持を得ていた。今度はバロンドールでしょう。フランスとの縁がますます深まったように感じる」
――投票結果は2位に大差をつけた圧勝でした。
「この歳(34歳)になって、こんな素晴らしい賞をいただけるなんて……。想像もしていなかった。この夏、私は最高の女性たちに囲まれて自分の役割をまっとうすることができた。ストライカーとしての責務を果たしゴールも決めた。
人々の期待には応えたかった。何か特別なことができる自信があったし、アメリカ代表は本当に素晴らしいチームだったから」