フランス・フットボール通信BACK NUMBER
差別と戦ったミーガン・ラピノー。
メッシ、ロナウドらを痛烈批判。
posted2020/03/22 11:55
text by
クリストフ・ラルシェChristophe Larcher
photograph by
Lionel Hahn/L'Equipe
ミーガン・ラピノー。
サッカーというスポーツの枠を越え、世界的に称賛された、このアメリカの“ミリタン(社会活動家)”は、果たしてどんな女性なのか?
記事の後半では、FIFAやUEFA、メッシをはじめとする男子のスーパースターたち、さらにはサッカーの枠を超えたマイノリティへの差別へと、彼女の話はますます熱を帯びていき……。(監修:田村修一)
――社会活動家として、その責任の重さを感じることはありますか?
「それはまったくない。幸い私は能力に恵まれた。それは率先して戦える資質であるのかもしれない。自分に自信があるからマイクの前に立つことを恐れないし、言うべきことを言える。その意味では強い女性であるのだろうし、その心の強さが力の根源になっている。
たしかに講演や人と会うために旅をして回るのは消耗するけど不満はない。それで世界が良くなっていくのであれば、最前線に立ち続けるのを厭わない」
――その力はどこから湧いてくるのですか?
「凄く若いころに、正しい力が人生を進化させ得ることを私は知った。20歳からアメリカ代表でプレーしている(代表158キャップ)けど、確固とした自信を持ち力強さに溢れたチームメイトたち――ワールドカップやオリンピックで何度も優勝している仲間たちに囲まれてきた。彼女たちが私に力をくれた。
そこは他のどこにも存在しない類まれな坩堝で、私にはそれが自然な環境だった」
――その力は何を生みましたか?
「アメリカ合衆国大統領が私についてツイートした。たぶん彼を苛立たせたのだろうと思う。ジャンニ・インファンティーノ(FIFA会長)も、私の活躍がなかったら同性愛や人種差別に言及しなかったでしょう。長い間、彼はこの問題を避けていたから。
でも今、彼は私がここに存在していることを分かっている。そして仲間たちとともに、訴え始めたことも。声をあげることで、責任ある人々も行動を起こし始めた。そのうえ理解しあうことで、世界中の人々がサラリーの平等や、人種差別や性差別に対して戦うのは当然だと思うようになった。バロンドールを受賞したことで、選手たちとよりダイレクトに対話ができるようになった」
「彼らビッグスターたちは何もしていない」
――「クリスティアーノ(ロナウド)もレオ(メッシ)もズラタン(イブラヒモビッチ)も、見ているばかりでなく私の力になって!」と叫びたくならないですか?
「たしかに……。彼らビッグスターたちは何もしていない。スターリングやクリバリーは、少なくとも発言はしている。彼ら自身が差別的な扱いを受けているから。でも他の選手たちは……。
私も彼らスーパースターたちがうんざりするのを覚悟の上で、メッセージを発するように働きかけてはいる。ほとんど聞いてもらえないけれども」