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森崎浩司が語るうつ病と双子の絆。
「必ずまたなる」という発想の転換。

posted2020/02/21 12:15

 
森崎浩司が語るうつ病と双子の絆。「必ずまたなる」という発想の転換。<Number Web> photograph by Shiro Miyake

今はクラブアンバサダーとして活動する森崎浩司。彼ら兄弟の存在は、スポーツ界にとってきわめて重要なものだ。

text by

了戒美子

了戒美子Yoshiko Ryokai

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Shiro Miyake

 昨年11月、元ドイツ代表GKロベルト・エンケが病に苦しみ自ら命をたってからちょうど10周忌を迎えた。ブンデスリーガや、ドイツ代表戦の試合前には哀悼の意を表して黙祷が捧げられ、いくつかのメディアではあらためて特集が組まれた。

 今では周知の事実になっているが、生前のロベルトがうつ病を患っていたことは彼の死の直後に妻のテレサから明かされた。闘病中は家族と医師だけがその重い事実を抱えていたのだ。

 テレサはのちに「うつ病はタブーではない」とすると同時に「スポーツ選手はうつ病を公表する必要はなく、内部でサポートされるべき」とプライバシーは守られるべきだという考えを話している。

 また、「SNSによる選手への多大なプレッシャー」についても言及し、過度な期待やバッシングがいかに選手たちを苦しめるかについて理解を求めている。

 このドイツ発の話題をどう伝えようかと考えていた矢先、森崎和幸・浩司兄弟の著書『うつ白』の出版を知った。

 双子で共にサンフレッチェの生え抜きで、J1で3度のリーグ優勝に貢献したスター選手であると同時にうつ病に苦しんだ現役生活でもあった。兄の和幸さんは'18年に、弟の浩司さんは'16年に選手生活にピリオドを打った。

 本書ではストレートなタイトル通り、自分たちの病歴をサンフレッチェでの戦歴と交えつつ、オープンに綴っている。またサブタイトル「そんな自分も好きになる」の通り、苦楽の全てを受け入れて肯定しようとする姿も描かれている。

 彼らの体験を追うことは日本のスポーツ界にとって意味があるはず、と森崎浩司さんにお話を聞かせてもらった。

引退したからこそできた話。

――まず、この本を出されることになった経緯を教えてください。

「選手時代から2人の本を出そうという話はありました。でも現役中は、1人は体調がよくてももう1人の調子が悪い、今度は逆、というのが続いて。2人とも引退して、うまく自分と付き合いながら過ごせるようになり、このタイミングになりました。

 もし現役中だったらサッカーに特化した話になっていたでしょうけど、引退後だからこそ体調のこと、うつのことをメインにしようと思いました」

――自身の体調、病気をテーマにすることに抵抗はなかったのですか?

「もちろんありましたよ。とはいえ書くからには自分を晒けださないと意味がないと思いつつも、出せないところもあるなと最初は思っていました。僕らだけの問題じゃなく家族もいますし、子供が何か言われる可能性も考えましたし。

 ただ最終的には、2人で一緒に出す本だということが力になりました。選手時代は弱みを見せたらいけないと思っていましたが、引退して覚悟も決まり、少しでもいろんな人の役に立ちたいし、僕らの現役中のことを知ってもらいたいなと」

【次ページ】 眠れない、食欲低下からはじまって。

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