「うつは受け入れた方がいい」

――ものすごい発想の転換ですね。

「うつが毎年くるような方とか、ずっと苦しんでいる人は受け入れた方がいいんです。絶対」

――そう考えられるようになるのは大変そうです。

「病気があったからこそ今の自分がある。そう思えることが、今後の人生にも役にたつかなと思っているんです。自分との付き合い方もわかってきました。自分自身を分析して、俯瞰して、調子に乗ってるなと思ったらセーブします（笑）。

　あとは、自分を信じられるようになりましたね。良くも悪くも自分がやってきたことに後悔はないし、受け入れる力がついた。でも、そう考え方を変えるのが一番難しかったです」

――「そんな自分も好きになる」という、タイトル通りですね。

「はい。考え方が前向きになったのが、一番よかったことですね。あと先生に言われて印象的だったのは、ネガティブになるのは悪いことじゃないし、不安はだれしも抱えながら生きているのだから、不安を悪く思わないでいいということでした」

最後まで楽しむのは難しいことだった。

――考え方が変化していく中で、本には「プロとしての最後の1年を満喫したい」という言葉がありました。実際はどうでしたか？

「いやー、結局できなかったですね。もっと満喫すればよかったなと思います。プロになってから、楽しかったなっていう時期はほとんどないんですよ。もちろんゴールを決めた瞬間とかチームが勝ったとき、優勝したときは喜ぶし、サッカー選手になれてよかったと思いましたけど、それ以外は苦しいサッカー人生だった。

　高校生まではサッカーを楽しめばいいという考えしかなかったのが、仕事になってからは全てが変わりました。だから、日本代表とかの試合を見てても、中島（翔哉）くんとか『楽しみたいです』と言ってるじゃないですか。あれ、すごく共感できるんです。自分から楽しみますって言えるのは、素晴らしいことだと思います」

――ご自身がそう口にしたことは？

「『この試合楽しみたいです』って一応言うことはありましたけど、実際は楽しむ余裕がないことがほとんどでしたね。でも今は、ボールを蹴るとすごく楽しい。イベントとか、子供たちと遊びでサッカーとかフットサルをするのって本当に楽しいですね。

　今日も、小学校の時に所属していた矢野フットボールクラブの初蹴りに参加して来たんですよ」

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