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森崎浩司が語るうつ病と双子の絆。
「必ずまたなる」という発想の転換。
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph byShiro Miyake
posted2020/02/21 12:15
今はクラブアンバサダーとして活動する森崎浩司。彼ら兄弟の存在は、スポーツ界にとってきわめて重要なものだ。
常に比べられる双子の苦しみ。
――もともとのイメージだと、和幸さんよりも浩司さんの方が社交的な印象です。
「頑張ってそう見せてたんでしょうね。兄貴よりヤンチャ感があって、常に誰かを笑わせたりとか明るい自分を作ってたんです。でも、しんどい時はそういうことができなくなるので、変化がわかりやすいんです。カズはもともと無口で寡黙なんで、変化があまりわからないんですよ。ずっとあんな感じだから(笑)」
――周囲に気づかれないのも辛そうですが、気づかれるのもキツそうですね。
「辛かったですよ。周りから『浩司、多分つらいんだろうな』と思われてるだろうなって感じるのがイヤでした」
――双子だったことは、どんな風に影響したんでしょう?
「そうですね、双子だったからこそうつになり、苦しんだのではとは先生にも言われたんです。競争相手が一番身近にいて、同じ環境で育って、38年間ずっと一緒ですから。気にしてしまうタイプだし、気になってしまう相手だし」
――片方だけが代表に選ばれた時などは気になりそうです。
「実は、自分の調子が良い時は何も考えていないんです(笑)。でも、自分がカズより下にいるときは劣等感でいっぱいです。ライバルだと僕もあっちもずっと意識してる。
今でもそうだと思います。僕はアンバサダーなので広報活動がメインで、彼はフロントで営業をしている。全然仕事場は違うんですけど、それでもライバルというか、意識してます。カズよりもほめられたいとか、そういう欲がすごく強いんだと思います。まわりから評価されたいんです」
「カズがいたのはプラス材料です」
――病気のことについて、和幸さん以外の人に相談したことはありました?
「他の選手にはしてないですね。カズがいなかったら病気にはならなかったかもしれないけど、双子ではなくて1人で病気になってたら、確実に引退早まってましたね。僕らは、やっぱり理解してくれる人が一番近くにいたんですよ。カズがいたからうつになったかもしれないけど、カズがいたのはプラス材料です。ぼくら2人はやっぱり双子なんだなって」
――和幸さんの話も登場する第9章で、自分たちの病気についての「必ずまたなる」というタイトルが衝撃的でした。
「またなるって考えていた方が、実際になったときに対処しやすいんですよね。しんどいうつの時期を乗り越えた後って、無敵で何でもできるように感じるんです。嬉しさもいつも以上だし、やっと抜けられた、眠れるし食べれるし、もう絶対うつにならないんだって考えちゃう。
でも、それが落とし穴。またしんどい時期がきて、反動でズドンって落ちる。それを何度も経験してるから、『必ずまたなる』って言えるんです。引退してから3年間は落ちる時期が全くなかったんですよ。でも今後何か不幸なことがあったりとか、きっかけはどうあれ、僕も含めて誰でもうつになる可能性はある。だからそれを認めちゃって、またなるって考えてた方がラク。なったらこれまで通り自分でコントロールすればいい、それを認めるというか」