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トルシエ「森保監督には2つの選択肢」
五輪・金メダル獲得へのプランとは?
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byEtsuo Hara/Getty Images
posted2020/02/05 20:00
1月29日にJFAからU-23日本代表監督続投が発表された森保一監督。2つのチームをどうまとめていけるか……。
「ツーロン国際大会は難しいものになるだろう」
――その後に最後の準備があります。5~7月のプログラムですが。
「申し分のないプログラムだ。ほとんどの国はここまでの準備はできないだろう。
まず3月にグループを確定する。30人ほどの選手たちに、君たちが最終候補だというメッセージを送る。
5月の合宿は、どのぐらいのものになるかよくわからない。というのも5月はヨーロッパのシーズンが終わる時期で、選手は休養が必要だからだ。
またフランス遠征(ツーロン国際大会)も、森保にとってちょっと難しいものになるだろう。シーズンを終えたばかりのヨーロッパ組は疲労がたまっている。
何人かの選手に試合の機会を与えはするし、森保が選抜を躊躇う選手たちの最後のテストにはなるだろうが、チーム全体にとってツーロンが有意義であるとは私には思えない。
そして真の準備は兵庫で行われる直前合宿から始まる。準備の鍵を握るのは3月と兵庫だ。3月の2試合と7月の兵庫の合宿は、100%のベストメンバーで臨まねばならない」
日本は自分たちのプレースタイルを追求せよ!
――五輪は登録人数が18人と少ないうえにオーバーエイジ枠もあります。また開催期間も短く、他のメジャーな国際大会よりも日程が詰まっています。ちょっと特殊な大会なわけで、具体的にどんなところに気をつけて準備をしたらいいのでしょうか?
「日本には開催国として大きなモチベーションがある。日本にとって今回の五輪は特別だ。その上あの時期の日本はとても暑い。ただ、選手たちは十分な訓練を受けているしフィジカル面も申し分ない。疲労の回復もあらゆる手段を講じられる。
日本はボールを保持し、自分たちでコントロールするプレースタイルであるから、ポゼッション戦略が試合の鍵になるように私には思える。日本のサッカー哲学は、ボールを支配してコントロールすることだ。その哲学は、相手を走らせる点で有効だ。自分から消耗するスタイルではない。
生半可ではない蒸し暑さのなかでの厳しいスケジュール。心理的なプレッシャーも大きいが、同時に力強いサポートも日本中から受けられる。気候や五輪という大会の特殊性は、さほど大きな問題であるとは私には思えない」
――つまり自分たちのプレースタイルを追求していけばいいと。
「そうだ。タイでは攻撃のインパクトが足りなかったし、1対1で違いを作り出す個の力がなかった。モチベーションもオートマティズムも欠いていた。しかしオーバーエイジが加われば――例えば柴崎(岳)は中盤をコントロールするうえで大きな役割を果たすことができるし、南野(拓実)は攻撃の局面で決定的な仕事ができる。大迫(勇也)もプラスアルファをもたらしてくれる。さらにヨーロッパ組の堂安(律)や冨安(健洋)、久保(建英)、中山(雄太)らも、十分に個の力で違いを作り出せる。
加えて日本にはコレクティブな哲学がベースにあり、パニックに陥ることなくボールを支配してコントロールできる。そもそもの戦闘能力は高いんだ」