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トルシエ「森保監督には2つの選択肢」
五輪・金メダル獲得へのプランとは?
posted2020/02/05 20:00
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph by
Etsuo Hara/Getty Images
開幕まであと5カ月に迫った東京五輪。だが、U23アジア選手権でグループリーグ敗退を喫したサッカー日本男子・五輪代表には、期待よりも不安が募っているのが現状である。「このままで大丈夫か?」と関係者やファンの多くが懸念しているようだが、本当のところはどうなのか。
タイで開催されていた選手権大会と各国の代表チームを、隣国ベトナムから観察し続けたフィリップ・トルシエが、日本サッカーの現状と可能性、さらには五輪に向けてどう準備を進めていくべきかを具体的に語った。トルシエが見出した日本の展望とは……。
――U23アジア選手権は、韓国(優勝)もサウジアラビア(準優勝)もしっかりと準備して臨みました。ウズベキスタン(4位)もそうです。ほとんど時間をかけなかったうえにヨーロッパ組を欠いた日本が、グループリーグで敗退したのは当然の結果ともいえます。
「分析は常に必要だが、ヨーロッパ組を呼べなかった日本が、準備に関してサウジやウズベキスタン、オーストラリア(3位)とは状況が異なっていたことは、当然差し引いて考えるべきだ。
君は『五輪に向けて日本の準備は遅れているか?』という質問を私にした(註:質問表は予めメールで送付しておいた)が、私は『ノン』と答える。日本は決して遅れてはいない」
「時間はまだ十分に残されている」
「遅れとは一体何か? 代表はまず選手を選ぶことから始まる。日本の五輪代表に関しては、実質的に80%の選手がヨーロッパでプレーしている。残念ながら森保(一)監督は選手を思うように選べずに、国内の選手たちでこの大会に向かわざるを得なかった。ここに他の国との大きな違いがある。
結局、日本は準備不足のうえモチベーションを欠き、決意もインパクトも足りなかった。普段から見慣れている日本の頼もしい選手たちではなく、ただただ日本の弱さが目立ってしまう大会となった。
たしかにポジションをしっかりとってボールはキープするが、得点への意欲も勝利への意志も感じられなかった。アグレッシブな戦略もなかった。
繰り返すが今の段階で準備は遅れているかという問いへの私の答えは『ノン』だ。実際、時間はまだ十分に残されている。3月には試合のプログラム(27日・南アフリカ戦、30日・コートジボワール戦)が組まれているし、5月には合宿(17~19日・Jヴィレッジ)が予定され、6月はツーロン国際大会に参加する。その後は兵庫で直前合宿(7月6~17日)が行われる。たっぷりと時間をかけて準備ができるわけだ」